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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

校長自殺に公務認定 「児童に目線」忘れるな

中国新聞 社説


'05/11/12

 「なぜ、子どもに目線を向けて教育を考えられないのか」―二年半前に自殺した尾道市立高須小学校の民間人出身の元校長が遺(のこ)した言葉である。今も重い意味を持つ。

 地方公務員災害補償基金広島県支部(支部長・藤田雄山知事)が、元校長と、その自殺について調査していた尾道市教委の元教育次長の二人の自殺を公務災害と認定した。行政側にも自殺の責任がある、と認めた判断である。教職員の自殺を労務災害と認定することは全国的にも異例だという。しかし、経過を見れば当然過ぎるほどの判断である。今後、教育改革を進める中でこうした悲劇の教訓は忘れてはならない。

 元校長と元教育次長の遺族が請求していた公務災害補償について、広島県教委は「認定が妥当」との意見書を同支部に提出していた。意見書は、元校長の自殺の背景を「学校運営について悩んでいた」として、校長のリーダーシップが発揮しにくい状況だった▽相当の時間外勤務があった▽教頭不在時の県教委、市教委の支援が十分でなかった―などと分析している。同支部は認定理由を公表していないが、こうした県教委判断が反映されたといえよう。

 県教委は地元経済界の推薦を受けて民間人から校長を採用、教育改革に学外の人材導入を図ろうとしたが、就任前の研修はわずか二日間だった。学校現場をほとんど知らない民間人への研修とは思えない。しかも、旧文部省の一九九八年の是正指導で「校長権限の確立」などを図る教委側と、現場の教職員との間には深い溝もあったという。

 元校長にとって悲運だったのは、一年の間に二人の教頭が病気で倒れるという異常事態に見舞われたことである。一番の相談相手が倒れたのでは、新米校長の大変さはいやでも想像がつく。しかし、市教委も県教委も十分な対応を取らなかった。こうした点については県教委も反省、その後の民間人校長の採用を全国公募制にしたり、就任前の研修も一年に延長した。校長を支援する主幹制度も導入している。

 しかし、自殺の主な原因については、教委側と広島県教職員組合の見解は対立したままだ。教委側は、国旗掲揚や国歌斉唱の扱いなどで、元校長と教職員の一部に対立があったことを指摘する。それに対し教組側は、それらの扱いが昨年と違うことを急に言われ、教職員に不満はあったが、元校長の指示通り行ったとして、対立を否定している。

 ただ、いま教委や学校現場にとって問題なのは、元校長のいう「子どもに目線を向けた」教育が、どこまで実践されているかである。地域に開かれた学校を目指す試みはある程度の成果をみせているようだ。学校の多様化も進んでいる。しかし、是正指導以降、現場は提出書類に追われ、子どもたちと接触する時間が減っているという。さらに、上からの管理や校長権限強化が、現場を委縮させていないか。振り子の揺れ過ぎは絶えずチェックする必要がある。

 子どものための教育の基本は、子どもの自主性を育て、生きる力を身につけさせ、自立を促すことにある。それらは上からの過度な管理からは決して生まれないだろう。
by miya-neta | 2005-11-12 08:52 | 教 育