人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

「下流社会」の三浦展さん 階層化進む若者像示す

出版トピック : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


 日本社会の階層格差が拡大し、収入も消費意欲も低い人々が増えている――。階層化の実態を生々しく描く『下流社会』(光文社新書)が、団塊ジュニアのサラリーマン層に熱い支持を受けている。消費社会を研究する著者、三浦展(あつし)さん(47)に聞いた。(待田晋哉)

    ◎

「下流社会」の三浦展さん 階層化進む若者像示す_b0067585_1022043.jpg 1950~70年代の高度経済成長期に生まれた「新中間層」が「上」「下」の二極に分化していると、本書は指摘する。若い世代に増えた「下流」は、人生全般に対する意欲が低い。旧来の「中流」にとどまろうとすれば、社員の早期選別を強める会社で男性は出世競争を強いられ、「寿退社=専業主婦」のモデルが崩れた女性は、人生決定の自己責任を求められる。

 9月下旬に初版が出て、たちまち40万部を出版した。暗い気分になるこの本が、なぜ読まれているのか。

 「現在の若い世代は就職が難しく、会社ではめいっぱい残業させられる。結婚しないのは社会構造的な理由があるのに、ほかの世代が分かろうとしない。その苦しさを伝えたからではないか。競争が嫌いで中流を降りたかった人は、『下流』と言われて楽になったところもあるのでは」

 階層化の進行を前提に、男女を幾つかの類型=図参照=に分類し、分析を進める。〈階層意識が高く生活満足度も高いのは裕福な男性と専業主婦と子供のいる家庭〉〈男性の所得が上がるほど既婚率が高まる〉――。導き出される言葉は、保守的にさえ映る。
「下流社会」の三浦展さん 階層化進む若者像示す_b0067585_103425.jpg
 「報道ジャーナリズムは建前ばかりで、言いにくい事実を伝えない。例えば、男女共同参画が進んで働きながら子育てする社会を、本当にすべての女性が求めているのか。競争社会といっても、すべての会社員が望んでいるのか。もっと現実を見た方がいい」

 昨年9月に出版した『ファスト風土化する日本』(洋泉社)は、新幹線や高速道路が整備された地方で旧来のコミュニティーが破壊され、その結果、住民は郊外の大型店へ車で買い物に出かけるようになって中心街は寂れ、関係性が希薄になったと訴えた。

 併せ読むうちに、わが国の将来が不安になってくる。少数のIT長者やセレブがおしゃれな都会生活を満喫する一方で、仕事のある東京には、コンビニエンスストアで安い週刊誌を愛読する「SPA!系」や「かまやつ女」のような低収入の人間が吸い寄せられ、地方はギャルやフリーターが滞留するようになる。各層間には「バカの壁」が存在し、互いを理解できない社会になっていくのだろうか?

 「結果に差がつく自由競争はとりあえずいい。会社員が嫌だとヒッピーをするのは自由だ。下流でいいやという感覚もあり、それをダメだというほど単細胞でない。ただ、子供のスタートラインに差がつくのは問題だ。階層が再生産され、固定化するのはまずい。現在は階層化が始まりつつある段階だが、パリで今起きている暴動が20年後に日本で発生しないとは限らない」

 「中流社会」を謳歌(おうか)した団塊世代の子供たちは、「下流社会」を生きるのを良しとするのか。階層化の進展を示す本書は、若い人々に覚醒(かくせい)を訴えているように見える。

 かまやつ女 全体的にルーズな服装で、その風体がミュージシャンのかまやつひろしを思わせる若い女性たちのこと。自分らしさを大切にしながら、美容師やデザイナーなど「手に職」志向が強く、専業主婦願望はない。今年3月刊の『「かまやつ女」の時代』(牧野出版)に詳しい。

(2005年11月16日 読売新聞)
by miya-neta | 2005-11-16 10:00 | 社 会