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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

兵庫教育大:フィンランド、米国の専門家招き学力を論議

教育:MSN毎日インタラクティブ


 昨年末に公表されたOECDの「生徒の学習到達度調査」(PISA)、国際教育到達度評価学会(IEA)の国際数学・理科教育調査(TIMSS)は、日本に大きな学力論争を引き起こした。日本の子供たちの学力は低下しているのか、低下しているとしたら何が原因で、どう対処すべきなのかを話し合う兵庫教育大学の国際シンポジウムが東京都内で行われ、世界トップクラスの学力を維持しているフィンランドの研究者や、米国の教育社会学の専門家らが「学力」について報告、討論を行った。【岡礼子】

 米国・スタンフォード大のアレックス・インケルス名誉教授が、IEAの調査結果について、「調査が始まったころは各国を相対的に比較していたが、今は各国の相違点を見る方法に変えている。家庭の影響、社会的な階級の影響、学校、学級環境の違いなどが教育に及ぼす影響を調査している」と紹介、「特に『読む力』の差は大きい。国と国の間でも同じ国の中でもバラつきがある」「科学のように、性差による違いがみられる教科もある」--など、調査結果を比較しながら紹介した。

 また、「学習時間の多寡」「勉強が将来役に立つと思うか」などを聞いた結果を紹介、「多くの子供が、勉強すべきなのかどうか疑問に感じているが、大人は一定のスキルが将来役に立つと認識している」と話し、「家庭、親が学校を支援して、勉強したことが役にたつと、子供に教えることが解決策になる」と指摘した。

 インケルス教授は「調査によって教育政策の問題点が明らかになり、教育の質を保証できる」と話し、「日本は成績の低下を心配する必要はない。1位ではなくても全体的に成績はいい」とまとめた。

 学習到達度に影響する要因について、シカゴ大のチャールズ・ビッドウエル名誉教授は「米国では、マイノリティーの学力向上を目指して『No Child Left Behind』法を施行したが、効果は上がっていない。学習の到達度には教材、財政、家庭環境が影響する」と述べ、「指導法に関わりなく、教員の間の連携が強い学校ほど到達度が高いという研究結果がある。学校ごとに指導法を蓄積、共有することで、生徒の理解が深まるためではないか。教員の連帯を強めるような学校の組織デザインが、学力向上に効果的だろう」と指摘した。

   ◇ ◇ ◇

 討論では、インケルス教授、ビッドウエル教授、米ノートルダム大のマウリーン・ハリナン教授、フィンランドのユヴァスキュラ大のヨウニ・ヴァリヤルヴィ教授に、竹内洋・兵庫教育大客員教授、教育政策研究所の小松郁夫・教育政策評価研究部長を交え、「学力とは何か」をテーマに議論を行った。

 ハリナン教授は「どのような能力を測りたいのか。それはテストできる力なのだろうか」と問い掛け、「考える力や学ぶ意欲など価値観の問題では、試験の領域を増やす必要がある。米国では子供の創造力を失わずに学力を上げようとしている」と述べた。ヴァリヤルヴィ教授も「何を測定しようとするのかをきちんと考えることが重要だ」と指摘、「教員の質、教室の環境など、さまざまなレベルで教育制度を評価して、将来の方向性を考える必要がある」と話した。

 竹内教授は「(日本の)子供たちは、学校で学ぶことは世の中で役にたたないと思っている。このことが学ぶ意欲に影響している」と述べ、シンポジウムのコーディネーターを務めた梶田叡一・兵庫教育大学長が「70年代の調査でも日本の子供たちの読解力は低かったが、調査結果を日本は検証してこなかった。子供の学習到達度に、家庭、学校がどのような影響を及ぼすのか。教員の資質はどうか。行政はどうあるべきかなど、データに基づいて、(教育界が)声を上げていく必要がある」とまとめた。

梶田叡一・兵庫教育大学長 兵庫教育大は、児童・生徒の学力評価など、客観的なデータを収集、分析し、教育政策に生かしていくことが不可欠だとして、今年4月、教育・社会調査研究センターを設立した。同センターは、教育をテーマにした全国調査や、データの収集・分析を行うほか、調査に関する公開講座や、教育をテーマにした国際シンポジウムの開催を活動の柱に掲げており、今回のシンポジウムはその1回目。

毎日新聞 2005年11月25日 19時08分
by miya-neta | 2005-11-25 19:08 | 教 育