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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

《解答乱麻》教科書の「薄さ」が心配

産経新聞・教科書問題特集


ジャーナリスト・細川珠生

 一昨年十月に東京都品川区の教育委員になってから「教育委員はどんな仕事をしているの?」とよく聞かれるが、さまざまな任務の中でも、教科書採択に費やすエネルギーは大変大きい。昨年の小学校に続き、この夏、来年度から使用される中学校教科書の採択に携わった。

 私のように教師としての経験も資格もない委員にとっては、必ずしも専門的な見方ができるわけではなく、校長や各教科の教員、学識経験者などが構成員である教科書調査研究会や教科用図書調査検討委員会によって作成された調査資料をもとに、各教科各社の教科書の検討に当たった。

 しかし、私たちは調査資料に拘束されることはなく、教育委員一人ひとりの意見を尊重した上での最終的な採択という意味で、品川区ではその方法に公明正大さを疑う余地はない。

 内外から大量の採択、不採択の要望があった歴史教科書については、私は扶桑社を推したが、四対一で他社に決まった。

 教科書を読み比べてみて、教科書問題は歴史だけではないことが分かった。実にカラフルで、アニメのキャラクターが「なぜだろう?」と呼びかける各単元の始まり方や、持ち運びが苦にならない薄さは、子供たちが自ら興味を持って勉強ができるようになるための「工夫」かもしれないが、二十年以上前に小学校を卒業した私には、参考書にすら見えない「中身の」薄さである。

 算数や数学の教科書には練習問題の答えが巻末に掲載されているし、国語の教科書には、新出漢字にご丁寧にルビやときには意味まで書かれている。

 「問い」や「例題」「確認」など、繰り返しポイントを押さえていく流れや「調べ学習」の指導などは自習にも対応できる構成になっているようで、習熟度別学習を取り入れている学校が増え、発展的学習も導入された昨今では、時代を反映しているといえるのかもしれない。

 また、数字の裏付けもなく「選挙にはお金がかかる」とか、「男女共同参画社会の実現が二十一世紀の最重要課題」と断言している公民の教科書など、主観的で感情的表現もいくつも目についた。

 全体として子供に媚(こ)びるような教科書の内容、特に日本人として欠くことのできない自国の歴史を学ぶ上で、教科書によって取り上げる史実に大きな差があることなどは、まさに今の日本の教育の芯(しん)のなさそのものであると実感した。

 学びの苦しみを経験してこそ、その楽しみが実感でき、日本人としての誇りを身につけさせることに教育の目的があるはずである。今こそ国がその姿勢を示すべきだ。学力低下の原因としての教科書の“責任”は非常に大きい。

ほそかわ・たまお
 父、細川隆一郎氏との父娘関係をつづった『娘のいいぶん』で日本文芸大賞女流文学新人賞。子育てのかたわらラジオや雑誌で活躍。東京都品川区教育委員。
 小学校用延べ五十二社、中学校用延べ七十二社という膨大な数の教科書を一冊一冊、内容や構成、表記や本の造り、地域性に配慮されているかなどの観点から丹念に読み比べるというのは、その期間、連日夜を徹しないことには到底こなすことのできない作業だった。

by miya-neta | 2005-11-28 09:56 | 教 育