ハリウッド、明るさどこへ 世相を反映、政治色強く
2005年 11月 28日
11月28日(月) 東京朝刊 岡田敏一/ロサンゼルス
明るく楽しい作風が持ち味の米ハリウッド映画だが、今年の話題作は陰鬱(いんうつ)でシリアスなものばかりが目立つ。題材も赤狩り、米中央情報局(CIA)批判、パレスチナのテロリスト暗殺計画など、極めて政治的色彩が強い。相次ぐテロや混沌(こんとん)としたイラク情勢など今の世相を反映しているようだ。米映画協会(AFI)の関係者も「こんなことは初めて」と驚いている。
「何かが違う」という声が出始めたのは、初夏の2大SF大作「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」と「宇宙戦争」がきっかけだった。「シス…」では、悪の帝国軍が正義を貫くジェダイの騎士を皆殺しにする。「宇宙戦争」では、侵略者を倒したのは米国ではなくバクテリア(細菌)だ。映画の中で無敵の米国が初めて侵略者に“敗北”を喫した。
10月封切りの「グッド・ナイト&グッド・ラック」。1950年代初頭、共産主義者を取り締まる「赤狩り」を断行したマッカーシー上院議員に真っ向から挑んだ米CBSテレビの伝説的なニュース・キャスター、エドワード・マローの闘いを描いた物語だが、全編が白黒。監督・脚本・出演を兼ねた男優、ジョージ・クルーニーは製作理由について、今の米国が自由にものが言えない時代に似てきたと指摘し「かつての米国で何が行われたかを思いだす時期に来ている」と訴える。
人気ファンタジー映画のシリーズ4作目「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」もシリーズ中で最も暗く、死や恐怖を強く連想させる。近く公開のCIAの元中東担当諜報(ちようほう)員の回顧録を題材にした「シリアナ」は、中東で対テロ工作に従事する主人公の目を通し、CIAの実態を、中東の石油利権問題と絡めて描く。
来月末封切りの「ミュンヘン」は、1972年のミュンヘン五輪でパレスチナのテロリストがイスラエル選手団を殺害した事件に関し、イスラエルの情報機関モサドがテロリストの暗殺計画を企てるという内容だ。
ベトナム戦争やウォーターゲート事件など、ハリウッドが政治的で陰鬱な出来事を映画化するのは必ずしも珍しくない。しかしAFIは「ファンタジーやヒーローものまで暗く描くのは異例。9・11からイラク戦争に至る米国の世相を反映している」としている。
AFIは先ごろ「過去100年で最も感動を与えた映画100作品」を選ぶと発表した。来年6月の特別番組で発表する。「今の米国には感動作が必要だ」というのが理由だ。そこには「米国民よ、見えざる恐怖に屈するな」という熱いハリウッドのメッセージが込められているように思える。
.jpg)
