嗚呼 言うは易く行うは難し! 「抱擁」
2006年 01月 08日
2006年01月05日10時40分
ニューヨーク(NY)の学校は、年明け3日から新学期が始まるところが多い。
息子の通う学校も同じなので、2週間の短い日本での冬休み滞在を終え、我が家は大晦日(おおみそか)にNYにまたやって来た。
年越しそばを食べることもなく、除夜の鐘を聞くこともなく、なんだかトホホの気分でJFK空港に着いた。
大きな荷物をカートに乗せて到着ゲートから出てきた人々と、出迎えの人々で、空港はいつにも増してにぎわっていた。
久々に出会った家族や友だちたちだろうか、あっちでもこっちでも抱き合ったり、頬(ほお)にキスし合ったり……。
こっちの人たちは本当によく抱き合う。
息子がNYのプリ・キンダーガーテン(日本でいう幼稚園の年中)に通うようになって初めての担任の先生(2人)との個人面談の後、立ち上がった彼女たちは、私たち夫婦それぞれに抱擁してきた。
オー、こんなことをするのかー
私はちょっとオロッとしたが、彼女たちは私を抱きしめ、「あなたのお子さんの担任になれて本当に良かった」と、とても嬉(うれ)しそうに言ったのだった。
NYの日本人ママ仲間に聞くと、彼女たちも同じようにされて、やっぱりちょっと戸惑ったそうだが、担任がとても身近に感じられ、その後の付き合いもしやすくなったと言っていた。私も同感だった。
親にもこんなふうだから、担任たちは子どもたちも、しょっちゅう抱きしめていた。
朝、会ったら、ぎゅっ。友だちにやさしくできたら、ぎゅっ。ランチをきれいに食べたら、ぎゅっ。絵が上手に描けようが描けまいが、できたら、ぎゅっ。帰るときにも、ぎゅっ。
本当にしょっちゅう抱きしめていた。抱きしめられると、子どもたちはとても嬉しそうにしていた。
親たちも、子どもたちをしょっちゅう抱きしめている。
子どもを学校に送って行って、別れ際に、ぎゅっ。
そしてたいてい、“ I love you ” と言い、“ I love you too ”と子どもが返し、互いに頬にキスして別れて行く。
中学や高校ぐらいの年頃の男の子と父親も、そんなふうにしているのをよく見かける。
日本にいる友だちで、今年中学受験を控えた男の子のお母さんが、「うちの子ね、私とふたりっきりになると、時々、きゅーと抱きついてくるのよ。だから私も、きゅーって抱き返すの。いつまでこれが続くかしらねえ。ずーっと続いて欲しいけど、無理かしらねえ」と言っていた。
人は、いつまでも誰かにちゃんと抱きしめてもらいたいのじゃないかと思う。それを、「いい年になって何を甘えているのだ」と言われるから、やらなくなってしまうのだ。子どもの抱きしめてもらいたいという気持ちを、親は追いやってしまわない方がいい。そうすれば、自暴自棄になってむちゃをしなくてもすむ子が、もっと増えるのではないかと思う。それに、抱きしめた方も癒やされる。
NYにぶつぶつ言いながらいるが、子どもを抱きしめる大人たちがたくさんいるのを目の当たりにするのは、ちょっといい感じ、と思う。
(次週に続く)