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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

NHK改革:改革の行方 「公共放送は維持」

テレビ:MSN毎日インタラクティブ


 NHKをめぐる改革論議が活発になってきた。竹中平蔵総務相がNHK民営化も視野に打ち出した改革の流れは、民営化を否定した小泉純一郎首相の発言でいったんは沈静化したものの、組織のスリム化や番組の視聴を有料にするスクランブル化を求める声は政府や与党内で大きくなっている。これに対し、NHKは24日に公表した06~08年度の経営計画の中に、衛星放送のチャンネル数の削減を検討する考えを盛り込むなど、改革に向けて自らの主導権を確保したい意向をにじませた。NHK改革の行方はどうなるのか。【NHK問題取材班】

 ◇枠組み、民放との二元体制/民営化、首相発言で修正へ

 ■「次は受信料」

 「公共放送は必要だ。民間放送と公共放送の二元体制は、日本の放送としては必要だというところでは、ほぼ意見が一致した」

 竹中総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」の松原聡座長(東洋大教授)は、23日の会合後の会見でそう明言した。竹中総務相も同席し、同様の意見を述べた。この日の検討課題は「NHKのあり方」。松原座長の発言は、受信料を財源とするNHKと、CMを収入源にする民放が併存する現行の枠組みを原則として維持することを示したとみられる。

 懇談会の方針についてNHKの幹部は「公共放送の必要性が確認され、とりあえず安心した」と胸をなで下ろす。「次は受信料問題がどうなるかだ」と、関心を受信料制度に向ける。

 安堵(あんど)感が広がっているのは、民放も同じだ。CMに依存する民放としては、商業放送化したNHKの参入は、CM費を奪い合うことになり、大きな脅威だ。ある民放関係者は「懇談会がこれほど早く表明するとは思わなかった」と明かした。

 「通信・放送のビッグバン(大きな改革)みたいなことをやる」(松原座長)と旗を掲げる懇談会としては、インターネットでNHKの番組をどう活用できるかという観点からの提言に収れんするとの見方もある。

 竹中総務相は27日の閣議後会見で「懇談会では(放送行政の所管を)総務省から第三者機関に移すことは議論されるのか」との質問に対し、「非常に大きな技術体系の中で基本的なあり方を議論するので、制度設計の詳細まで議論できるかは分からない。ただ、放送・報道の自由は守るべき大変重要な価値であるというのは当然の前提だ」と述べるにとどまった。

 懇談会が、もう一つの大きな課題であるNHKと政治との距離をどう保つべきかなど、放送の自由に踏み込んだ改革議論にまでたどり着けるかどうかは不透明だ。

 ■「見切り発車」

 NHK民営化の可能性は、竹中総務相が経済財政担当相から放送・通信行政を所管する総務相に「横滑り」した昨年10月末の内閣改造で一気に現実味を帯びた。

 「経済財政諮問会議の取り仕切り役でなくなった竹中さんが、新たにNHKに目をつけているのは間違いない」。当時、小泉改革路線と微妙に距離を置く自民党幹部は、郵政民営化に続く構造改革の目玉として、NHK民営化が政治テーマに浮上するとの見方を示していた。

 だが、事態はそうした予想に反する形で動く。小泉首相がNHK改革について「民営化じゃない他の議論がされるんじゃないか」(昨年12月22日、記者団に対して)などと、民営化を否定する発言を繰り返したからだ。首相は「公共放送の役割」を重視し、NHKを特殊法人のまま改革していく方向を示した。

 竹中総務相周辺は「自分が打ち出す路線は無条件で首相の支持を得られると考えていた竹中さんにとって意外な反応だった」と認める。首相への十分な根回しをしないまま「見切り発車」した竹中総務相は、この段階で軌道修正を迫られることになった。政府・与党内では、竹中総務相が今後、首相の意向との折衷案となる「部分的な分割・民営化」を模索していくのではないかとの見方が大勢だ。

 NHK改革については、自民党内でも検討が始まっている。党電気通信調査会の通信・放送産業高度化小委員会(委員長・片山虎之助参院議員)で放送改革論議をスタートさせたほか、昨年10月に自民党有志議員が設立した勉強会「NHKの民営化を考える会」(会長・愛知和男衆院議員)も民営化の是非を検討し、今国会中に意見をまとめる方針だ。

 ◇NHK、危機感なお

 NHKの経営計画には、政府・与党の改革論議を意識した内容が随所に見られる。受信料制度やチャンネル数について当面は現状維持を打ち出しつつも、アナログ放送が終了してデジタル放送に完全移行する2011年を機に、見直すことを明記している。

 経営計画は受信料制度について「(11年以後の)デジタル時代でも、分け隔てなく伝える公共放送の役割を果たすための財源としてふさわしい」と、基本的には維持していく方針を示した。だが、「受信料制度のあり方の検討が必要」と、見直しの余地があることも示唆した。

 保有チャンネル数の削減については、11年時点の放送界の状況を踏まえ「整理を含めて総合的に検討する」と明記した。具体的な対象となりそうなのがBS(衛星)第2放送。NHK内部にも「民放のBSはハイビジョン放送ができるが、NHKのBS1、2はできない。統合してハイビジョン放送ができるようにしたい」という思いがある。

 一方、スクランブル化に関しては、いずれのチャンネルにも導入すべきでないとの考えを明確にした。

 あるNHK幹部は「竹中総務相の懇談会は公共放送の重要性を後回しにし、NHKの規模を縮小して受信料収入の一部を他の消費市場に回そうとしているようにも受け取れる。NHK独自に改革を進めないと、存在意義が脅かされる」と危機感をあらわにした。

 一方、受信料や公共放送のあり方を論議しているNHKの第三者機関「デジタル時代のNHK懇談会」(座長・辻井重男情報セキュリティ大学院大学長)は、当初の予定になかった中間報告を4月までに発表する方針を決めた。最終報告は6月に出すが、竹中総務相の懇談会が同じころに結論をまとめる見通しのため、委員から意見集約を急ぐ声が相次いだ。

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 ◇自民通信・放送産業高度化小委員会、片山委員長に聞く

 自民党の通信・放送産業高度化小委員会の片山虎之助委員長(党参院幹事長、元総務相)にNHK改革について話を聞いた。【聞き手・臺宏士、丸山進】

 ◇必要なチャンネル、自ら検証を

 --竹中平蔵総務相の懇談会は、公共放送と民放の二元体制を維持する方針のようです。

 ◆小委員会の大勢も同じだ。しかし、議論は始まったばかりで、懇談会が全部決めるようにはなっていない。最終的には政治が決めることだ。

 --懇談会はNHKの業務を公共放送の役割とそれ以外に区分し、部分的な民営化を進めていくとみられていますが。

 ◆公共放送の役割をはっきり分けるのは難しい。性格と役割の大枠を決めればいい。ニュースなどの基本的な情報や、災害に関する情報、民放で取り上げられにくい学術、研究番組の放送などがある。スポンサーがつかないスポーツも公共放送が放送すべきだし、ドラマも同じものがある。

 --NHKは8チャンネル(地上波2、ラジオ3、衛星3)を保有し、懇談会でも多いという意見はあるようです。

 ◆私も多いという印象はある。しかし、重要なのは、波が多いから悪いのではなく、必要がないのに保有しているかどうかだ。NHK自身が必要性を検証し、それが国民から見て納得できる内容かどうかだと思う。

 --通信・放送行政の所管についてどうすべきだと思いますか。

 ◆各省に分散している権限の一元化は検討してもいいと思う。

 --橋本元一NHK会長は受信料の未払いに罰則を導入することに「報道機関にはなじまない」と反対し、スクランブル化にも反対の立場です。

 ◆3割も不払いが生じている今の状況は極めて不公平だと思う。放送法で支払いを義務付ける規定を明記することは考えてもいい。強制徴収的な手段や罰則も検討すべきだ。公共放送は皆に見てもらう必要があり、スクランブル化には反対だ。

毎日新聞 2006年1月31日 東京朝刊
by miya-neta | 2006-01-31 09:14 | メディア