自民党改革/シンクタンクに違和感ある
2006年 04月 02日
自民党の党改革実行本部は党の政策を検討する独自のシンクタンク(政策研究機関)をこのほど法人登録した。国会近くのビル内に事務所を開設。当面は「小さな政府」と「日本経済の3%成長への経済政策」をテーマに政策提言を取りまとめる。
自民党は党再生のタイムリーな妙手とでも言いたいらしい。
しかし、以前にも本欄で指摘した通り、同党が独自のシンクタンクを新設することには強い違和感を抱かざるを得ない。
なぜなら、政党は本来、シンクタンクの機能を党組織に内包していなければならないからだ。政策能力の劣化をシンクタンクの党外設置で取り繕うつもりなら、政党としては無責任だ。
同党内には「シンクタンクは屋上屋を架す」との反対論があったが、そうした声は市民権を得られなかったらしい。
シンクタンク構想は前党改革実行本部長の安倍晋三官房長官の肝いりで昨年から本格化していた。「官僚依存からの脱却」が大きな狙いだった。
同党政務調査会の各部会などは省庁対応型の組織で、官僚の政策支配を免れない仕組みだったのは確かだ。党内派閥も全盛期には官僚機構と癒着し、政・官・業のトライアングルが日本政治を動かしてきた。
それが、人口減少社会で経済成長を持続するには、利や財の分配を基本構造とする旧来の政策決定システムが転換を迫られることになる。派閥も衰退してきた。政治家にも、官僚に頼らず政策判断ができる「政策力」が求められるようになった。
中川秀直党政調会長が「霞が関が日本最高のシンクタンクだった時代は終わりを告げようとしている」と発言しているのも、官僚政治脱却は避けて通れないとの時代認識からだろう。
しかし、だからと言って政党シンクタンクにその荷を負わせようとするのはどうだろう。
官僚依存型の政策が自民党にはびこり続けたのは、同党が長年、官僚機構と一心同体で権力のうまみに浸ってきたからだけではない。官僚機構が国民の願いや声を代弁してきたと思いこみすぎてきたからではないか。
都市、農産漁村、業界、地方議会などの分厚い自民党支持層が常に官僚機構の後ろ盾を意識してきたのは事実だ。しかし、その支持層は同時に、同党が官僚機構に頼らなくても、国民の政策的な要求や必要性を全国津々浦々から提供できる幅広い国民的ネットワークでもある。
脱官僚や脱派閥を前提に、国民的ネットワークを再生して政策活動に努めれば、必ずしもシンクタンクなど必要あるまい。
先の衆院選の大勝によって政治的弛緩(しかん)症を患いつつある自民党だが、シンクタンク新設は少なくとも本来の「自民党らしさ」とは無縁である。
2006年04月02日日曜日