不公平なテストなくす「テスト」 日本テスト学会が基準
2006年 06月 20日
2006年06月18日10時51分
社会の隅々で、ほとんどの人が何らかのテストを受けた経験があるはずだ。結果に一喜一憂する一方で、テストそのものが本当に正しく作られ実施されているのか、疑問を持つ人も少なくない。大学入試センター試験のミスは記憶に新しい。実施する側が自由に作ってきたテスト。それに何らかの基準を作り、「不公平」をなくせないか。そんなテストをテストする試みが進んでいる。
日本テスト学会(理事長・池田央立教大名誉教授)。3年前、テストを研究する大学教授や大手進学塾の日能研、民間研究機関の教育測定研究所のメンバーらが作った。昨年3月には、学会メンバーが「規準作成委員会」を作って議論を始め、基本条項をまとめた。
条項では、「開発と頒布」「実施と採点」など4段階に分けて、それぞれ守るべきルールや注意すべきポイントなどを示している。対象は学力だけに限らず、人の心理や仕事の適性を調べるものもすべて含む。来年には、テストの種類ごとに、さらに具体的な指標を示す「ガイドライン」を完成させる。
この動きに早くも反応を示したのが、国家試験の関係者。経済産業省は「試験の品質などの指標として妥当と認められる」として、現在検討している国家試験の新しいシステムづくりを、今後完成する学会の「規準」を参考に進める考えだ。
同学会によると、日本では、大学入試センター試験など一部を除き、テストのあり方が問題にされるのはまれという。一方で、「不公平」を感じる例は多くの人が経験しているはずと指摘する。
たとえば「60点以上は合格」と決められたテストで、問題の水準が例年より極端に難しいために合格者の数が大幅に少なくなるなど、例を挙げればきりがない。
欧米には、テストを専門とする研究者が大勢いる。特に米国では、専門の組織がテストの問題点を見つけた受験者からの情報を受け付け、寄せられた情報を専門家が研究する仕組みが整っている。そうした研究を積み重ねた結果、出題や実施方法などの規範が形作られ、実施に携わる人は、順守を求められている。
池田理事長は「他の先進諸国にはテスト関係者向けの規範があるが、日本では整備が遅れていた。学会の『規準』に基づいて行われたテストは信頼できる、と保証できるものに育てたい」と話す。
同学会は現在、基本条項をサイトで公開し、意見を募集している。