希望校選択の自由重視 宮城県立高の学区撤廃
2006年 07月 14日
【解説】宮城県高校入学者選抜審議会が13日、県立高校の通学区域(学区)撤廃の答申素案をまとめたのは、中学生が希望校を自由に受験できる環境を整えることを最優先させた結果だ。「全県一学区」と、2010年度に実現する一律男女共学化によって、受験生の進路選択は飛躍的に拡大する。ただ、各高校がどのような特色ある教育を進めるのかという「質」の面の議論は遅れている。生徒、保護者、学校現場に戸惑いが広がらないよう、早急な対応が望まれる。
全国的には12都県が学区を撤廃、宮城以外の4県が廃止を検討している。こうした全国的な傾向に加え、昨年11月から今年2月にかけて実施した県民アンケートで、6割超が「撤廃」「拡大」と答えたことも「全県一学区」を後押しした。
審議会が学区撤廃を導いた選択の自由という「理念」は正しい。ただそれによって生じる「陰の部分」(西林克彦委員長)への対応について、丁寧な審議を尽くしたとは言い難い。
最大の懸念である、仙台市への受験者の集中については、県教委が13日の審議会で、仙台市以外の高校を人事、財政面で優遇することを明らかにしただけ。具体的施策の提示はなかった。精緻(せいち)な議論は難しいが、起こり得る不都合を検討し、ある程度の処方せんを練ることは必要だった。
学力向上が最重点課題となる中、現役の国公立大学合格者数を順調に伸ばしている県内の地域拠点校の取り組みを水泡に帰さないためにも、県教委は具体策を早急に打ち出す必要がある。
答申素案には、学区撤廃時期が示されていないため、受験を控える中学生には「いつから、どの高校が受験できるのか」との戸惑いも予想される。不安と混乱を招かぬよう、できるだけ早く各高校の特色ととともに、1学区導入の時期を示す必要がある。(報道部・小木曽崇)
◎「学力が向上」「格差広がる」/期待感と危機感交錯
県立高校の「学区制」を撤廃する素案が13日決まったことを受け、県内の関係者からは「学力の底上げや特色ある学校づくりが進む」と期待する声が上がった。一方、素案にも記された特定の学校への生徒集中や学校間格差の助長など、「陰」の部分を危惧(きぐ)する意見も根強い。
昨年、学区制の見直しを県議会に請願した仙台一高同窓会の猪狩常雄副会長は「段階的に進むと思ったが、一気に進んだので驚いた。全国の流れから言えば当然」と喜ぶ。「切磋琢磨(せっさたくま)で学力向上が期待できるし、学校も生徒に選ばれるように活性化を図るだろう」と指摘する。
学習塾「早進ゼミ」(仙台市)の小笠原栄司事務長は「選択幅が広がり、生徒は喜ぶだろう」と言う。「競争は激しくなり、生徒の負担は大きくなるが、悪いことではない」と学力向上に期待する一方で、「学力の二極化がさらに激しくなる」とも指摘する。
「100パーセントの結果が得られるわけではなく、どの道を選んでも課題は出てくる」。素案決定後、学区制検討小委員会座長の大桃敏行東北大大学院教授はこう述べ、生徒の一極集中や私立高への影響など不確定要素を指摘した。
「陰」の部分を危惧するのは県高教組の菊池英行委員長。「各高校の序列化をますます進め、競争を激化させる。仙台以外の地域や私立高の危機感は強い。県民を巻き込んだ議論がないことも不満だ」と憤る。16日に仙台市で学区制を考えるシンポジウムを開催する。
学区制の全廃を選挙の公約に掲げた村井嘉浩知事は、「県民の意見を十分に聞いた上で決めてほしい」と述べるにとどまった。
2006年07月14日金曜日
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