横浜・病院無資格助産行為:「看護師助産は必要悪」 院長「今後も続ける」
2006年 08月 25日
「看護師の内診は必要悪。やめたら明日から患者を診られない」。保健師助産師看護師法違反で神奈川県警に家宅捜索された堀病院の堀健一院長(78)は24日、報道陣に看護師らによる助産行為を認め、開き直った。死亡した女性については「なぜ亡くなったのか分からない」と因果関係を否定。助産師以外の助産行為を認めない厚生労働省の見解に、「これを機会に見直さないと、産婦人科は立ち行かなくなる」と強弁した。【堀智行】
堀院長との主なやりとりは次の通り。
--看護師に助産をさせていたのか。
院長 助産というと、素人の方はお産を取り上げるイメージを持つが、取り上げはすべて医者がやっている。看護師には分べん室に入るまでを見てもらっている。
--なぜ看護師に。
院長 以前は看護師の助産がいけないことはなかった。3~4年前、厚生労働省が看護師に内診させないよう通達を出したため、助産師を募集したが集まらなかった。患者が来るのでお産を減らすわけにはいかなかった。大学病院でもない限り、開業医で助産師がちゃんといて、すべて整っている所は少ない。
--死亡した女性と助産行為の因果関係は。
院長 絶対ない。それは逆だ。看護師が内診した事実はあるが、取り上げからはすべて熟練した大学病院の医師が責任をもってやっている。
--女性の出産時の経過は。
院長 大学病院の医者が朝から診て、その日の夜に取り上げたが、出産後に出血が止まらなかったため大学病院に連れて行った。この医者が手術し、手術が終わるころ心臓が止まった。麻酔医を集め人工呼吸し、約1カ月半後に亡くなったと聞いた。何で亡くなったのか分からなかった。女性はお産の後に「気持ちのいいお産」と言い、自分はコーラス部にいたからと歌を歌ったとも聞いている。医事紛争に当たるようなものは思い当たらない。
--看護師による助産は他の病院でも行われているのか。
院長 ほとんどの病院でそうだ。看護師の助産行為がいいわけではないが、助産師が集まらない以上、必要悪。これまでこの問題はうやむやになっていた。この機会に見直さないと産婦人科が立ち行かなくなる。
--患者には告知してるのか。
院長 患者は法律的なことは分からない。今後、患者に法律を盾に主張されると他の病院も困るのではないか。
--今後も続けるか。
院長 続けないと、どうすればいいのか。患者を診るのをやめるわけにはいかない。
--患者にどう説明するのか。
院長 迷惑をかけたけど心配いりません。安全なお産を心がけますと説明してます。違反、違反と言わないで。
◇病院立ち入り、横浜市が方針
神奈川県警の家宅捜索を受け、横浜市は25日にも、堀病院に対し医療法に基づく立ち入り検査を行う方針を固めた。堀健一院長らから事情を聴き、助産行為が適切に行われていたかを調べる。産科・産婦人科がある市内の31病院(同病院を除く)に業務の見直しを求める通知を月内にも出す検討もしている。
また、堀病院に通院する患者の不安を解消するため、市医療安全相談窓口で電話相談を受け付ける。医師や助産師などの専門家が対応し、受け付け時間は午前8時45分~午後5時15分。問い合わせは045・671・3500。
◇分べん2953人、助産師6人--05年
堀病院の05年の分べん数は2953人。産婦人科医は院長含め7人、助産師が6人。ところが、分べん数が2074件の東京都葛飾区の産院は、産科医6人、助産師111人▽約2000件の分べんがある東大阪市の産科病院は産科医が8人、助産師が約35人いるなど、堀病院より多くの助産師を配置している。
安全な出産を目指す市民団体「陣痛促進剤による被害を考える会」(愛媛県今治市)の出元明美代表は「堀病院は助産師が一切助産行為をしていなかったという関係者の話も聞いている」と話す。84~05年、助産師ではなく、看護師らが助産行為を行い、胎児や母親が死亡するなどの医療ミスが、全国で少なくとも14件発生しているという。
しかし、産婦人科医の間では、一部の診療所などで、看護師が医師の指示を受けて助産行為を行っていることは、公然の事実。厚生労働省は04年に「医師の指示下でも看護師の助産行為は違法」との見解を示しているにもかかわらず、看護師の助産行為を認めることを支持する医師らが多くいることが、この問題の背景にもある。
出元代表は「助産経験が豊富で、誤った行為を指摘できる助産師より、医師の言うことを素直に聞きやすい看護師の方が任せやすかったのではないか」と批判している。
毎日新聞 2006年8月25日 東京朝刊
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