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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

増えぬホームのドア、可動式さく 普及率は3%

asahi.com:社会


2006年09月07日13時29分

 電車の到着時だけ開くホームドアや可動式ホームさくがなかなか増えない。駅ホームからの転落事故が絶えず、目が不自由な人たちからは、設置を求める声は根強いが、全国の駅の普及率はわずか3%。開け閉めに時間がかかることから、特にダイヤが過密な首都圏での運行に影響が大きく、消極的な鉄道会社が多いためだ。

増えぬホームのドア、可動式さく 普及率は3%_b0067585_23223184.jpgホームに取り付けられた可動さく。設置駅はまだまだ少ない
=東京都中野区の東京メトロ丸ノ内線中野坂上駅で


 全盲の織田津友子さん(55)=東京都豊島区=はこれまで、駅のホームから3回線路に落ちた経験がある。「何が起きたか、まったくわからなかった」。幸い、3回ともけがは軽かったが、全盲の夫洋さん(52)は約20年前、埼玉県の東武東上線の駅から転落し、6カ月の重傷を負った。

 点字ブロックに沿って歩くようにしていても、人や柱にぶつかれば方向が狂うのは避けられない。「ホームの端にさくさえあれば、不安なく歩けるのに」と織田さん夫妻は声をそろえる。

 国土交通省によると、04年度、駅での転落、接触事故は118件あり、20人が死亡している(自殺を除く)。

 だが、対策が施された駅は一握りだ。同省の4月現在の調べでは、ホームと線路をガラスでほぼ完全に仕切るホームドアが11事業者、115駅、高さ1メートル強の可動式ホームさくが16事業者、183駅。全国の駅の3%に過ぎず、関東の1都6県では7%の計153駅にあるだけだ。

 JR東日本は東北、長野新幹線の9駅にさくがあるが、首都圏の在来線はゼロだ。牛島雅隆安全対策部長は「ホームドアや可動式さくは電車の停車時間が延びるのが最大のネック」と言う。

 ホームドアやさくは開け閉めに数秒かかる。首都圏の電車のダイヤは過密で、停車時間が延びると電車の本数を減らさなければならなくなる。さくでホームが狭くなることも重なり、混雑が悪化する恐れが高いという。

 JR東日本は社内で導入に向け検討を続けているものの、時期はまったく未定だ。

 別の鉄道会社の担当者は「運転士が停止位置を数メートル誤るだけでドアが開けられない。やり直しでさらにダイヤが乱れる心配がある」とこぼす。

 導入に前向きな鉄道会社もある。東京メトロは6月から、丸ノ内線で可動式さくの設置を始めた。来年9月までに全25駅に付ける。91年の開業時からホームドアを設けている南北線で転落事故が1件もないことから、「効果は高い」と拡大に踏み切った。設置工事費は約100億円で、維持費も年1億円かかる。

 丸ノ内線は(1)東京メトロの路線では混雑度が比較的低い(2)相互直通している他社の路線がない(3)停止位置を自動的に合わせる装置が付いている――として選んだ。全線で1分程度所要時間が延びるため、同社はダイヤの変更を検討している。

 ただ、ほかの路線では直通する他社と車両の規格を合わせることが必要なため、具体的な導入計画はまだないという。

 「鉄道会社に設置を義務付けては」との声もあるが、国交省は「路線ごとに事情が異なり、一律義務化は難しい」との見解だ。

 視覚障害者でつくる「東京視力障害者の生活と権利を守る会」は90年代以降、鉄道会社にホームドアや可動さくの設置を要望し続けてきた。

 事務局次長の山城完治さん(50)によると、94年以降、駅での転落や接触事故で死亡した視覚障害者は全国で少なくとも17人。過去に実施したアンケートでは、全盲の人の3人に2人が「ホームから転落した経験がある」と答えた。

 山城さんは「鉄道会社は、人命がかかっているということを忘れないでほしい」と話す。
by miya-neta | 2006-09-07 13:29 | 社 会