「朝永理論」を実証 岩手大など赤外プラズモン確認
2006年 09月 13日
ノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎博士(1906―79年)の理論を原子サイズで実証する研究に、岩手大工学部の稲岡毅・助教授(物性物理)と物質・材料研究機構(茨城県つくば市)の長尾忠昭主幹研究員の研究グループが成功した。1次元物質上でプラズモンと呼ばれる電子現象を初めて確認し、その性質を解明した。研究成果の第一報は、15日付の米物理学会学術誌フィジカル・レビュー・レターズに掲載される。
プラズモンは、物質の伝導電子が集団的に振動し、疎密波として伝わる現象。朝永博士はノーベル賞を受賞(1965年)前の50年に「1次元物質の中の電子は互いに避け合って音響波的に振る舞う」と予言して注目され、その実証が物理学界の課題になっていた。
研究グループは、シリコン表面に金の原子を吸着させ、金ワイヤを1.9ナノメートル(1ナノは10億分の1)間隔で配列し、1次元物質に究極に近い状態を設定。物質・材料研究機構が開発した世界最高性能の低速電子分光装置を使って散乱電子の角度・速度分布を解析した結果、初めて紫外・可視光領域を超える赤外領域でプラズモンを確認した。
従来の研究は、数十―数百ナノメートルサイズの金属材料を用いた紫外・可視光領域でのプラズモン確認しかできず、1次元物質での実証とは言えなかったという。
現象解析の精度を上げるための理論の開発にも成功し、1次元物質上でのプラズモンの波長の長短に従って、振動エネルギーの増加程度が変わることも解明した。波長が長い場合、最終的に2次元での現象へと移ることも分かった。
プラズモン現象は将来的に光制御などの分野で応用が期待され、研究が活発になっている。
稲岡助教授は「赤外領域での応用は生物にも優しく、新しいバイオ分野のセンサーなどの開発、研究に応用が期待できる」と話している。
<研究の多様性拡大/曽我直広滋賀県立大学長(材料科学)の話> プラズモン研究は新しく基礎的段階。科学技術立国の日本として世界をリードしていける分野だ。今回、1次元プラズモンの物性が解明されたことにより、研究の多様性が格段に広がるだろう。
2006年09月13日水曜日
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