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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

<3>「もう聞かないで」 (2006年10月5日)

企画・連載 : 北海道発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


心のケア、原因究明に優先

女児が通っていた学校でいったい何があったのか

 「先生、私たちの壁新聞、金賞とったんだよ」。中学1年生になった元教え子たちに元気な声で出迎えられ、小学校校長は安心した。「悲しい出来事からよくここまで立ち直ってくれた」

 滝川市内の小学6年生の女児(当時12歳)が教室で首をつってから1年後の今年9月10日。小学校の校長と教頭は、卒業した女児の同級生たちが通う中学の学校祭を訪れた。学校行事には必ず足を運び、心のケアを今も続けている。

 1年前、女児が自殺を企て、意識不明となった。全校集会で校長は、「6年生が首をつる『事故』があった」と報告、「命は決して自分一人のものではない。親からいただいた大切なものだ」と児童に説いた。しかし、いじめを苦にしていたことは伝えなかった。

 市教委や学校は、あらゆる方策を講じた。現場となった女児の教室は、別の教室に場所を移した。スクールカウンセラー2人を常駐させ、6年生全員に相談を行った。登下校時は教員が校舎前に立ち、子供たちに積極的に声をかけた。教員同士でも、様子がおかしな児童がいないか、情報を交換する「生徒指導交流会」を毎朝続けた。

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 一方で、いじめの事実を探るため、校長らは児童への聞き取りも実施。女児に自殺をほのめかすなど予兆があったことはわかったが、「直接の原因はわからなかった」と校長はいう。

 女児と級友がどういう関係にあり、何が彼女を追い詰めたのか。学校は、学級で話し合わせることに踏み切れなかった。「児童に動揺が広がり、(自傷行為や不登校といった)二次的被害を出すことだけは避けなければならなかった」と校長は釈明する。原因究明は不完全なまま、学校は心のケアに全力を注いでいく。

 「子供たちには当初、やはり精神的ショックが見られた。じっとしていられず、大声ではしゃぐ子もいた」と校長は振り返る。教員や保護者の一部も不眠や食欲不振に陥り、カウンセラーに相談した。

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 教員たちは児童に、「彼女も病院で闘っている。君たちも頑張ろう」と励ました。女児のため千羽鶴も折った。もちつき大会などの行事もあえて中止せず、例年通り行った。そうした配慮で、児童に不登校などの後遺症は表れなかった。

 女児は今年1月に息を引き取る。同級生らは3月に卒業、新生活に移った。校長も同級生の保護者も、「やっと落ち着いた子供たちに、この問題を聞かないでほしい」と口をそろえる。

 だが女児の遺族は「あの子が死をもって残したメッセージは無視され、なかったことにされようとしている」と無念さを訴える。周りの子供が「落ち着いた」という言葉が、遺族には「忘れた」と同義に聞こえてしまう。

 市教委は、「(児童の卒業で)調査は終わりということではない。ある程度、時間をおいて調べるということもある」と話す。
by miya-neta | 2006-10-05 21:52