ノーベル文学賞、トルコのオルハン・パムク氏
2006年 10月 12日
2006年10月12日21時26分
スウェーデン・アカデミーは12日、今年のノーベル文学賞を現代トルコの代表的作家オルハン・パムク氏(54)に授与する、と発表した。トルコ国内でタブー視されているアルメニア人大量殺害を認める発言で国家侮辱罪に問われるなど、反骨の言論活動で知られる作家だけに、トルコ内外に波紋を呼ぶとみられる。
ノーベル文学賞を受けたトルコの作家オルハン・パムク氏=02年1月、イスタンブールで、AP
同アカデミーは「生まれ故郷の街に漂う憂いを帯びた魂を追い求めた末、文化の衝突と交錯を表現するための新たな境地を見いだした」と授賞の理由を説明した。
1952年、東西の文明が交わるイスタンブールに生まれた。イスタンブール工科大で建築を学ぶが「一生部屋にこもってものを考えたり、読んだり書いたりしたい」と、イスタンブール大ジャーナリズム学科へ転じて卒業。22歳で本格的に小説を書き始める。
82年、デビュー作「ジェヴデット氏と息子たち」を出版、トルコで最も権威ある文学賞「オルハン・ケマル賞」を受けた。以後、「静かな家」(83年)、「白い城」(85年)、「黒い書」(90年)と話題作を発表、トルコ内外で多くの支持を得た。
98年にオスマン帝国末期の細密画師を描いた歴史ミステリー「わたしの名は紅(あか)」を発表、欧州各国の文学賞を受けて世界的ベストセラーになった。同著の邦訳を機に04年に初来日。世俗とイスラム、クルド独立問題といったトルコ社会のタブーに切り込み論争を呼んだ「雪」も06年3月に邦訳された。
昨年2月のスイス紙のインタビューで、オスマン帝国が崩壊し近代トルコが誕生する過程で起きたアルメニア人大量殺害を認める発言をしたとして、国家侮辱罪で起訴された。裁判はトルコの言論の自由をはかる尺度として注目を集めた。
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〈オルハン・パムク氏〉1952年、イスタンブール生まれ。イスタンブール工科大で建築を学ぶが、「一生部屋にこもってものを考えたり、読んだり書いたりしたい」と、途中からジャーナリズム学科へ転じて卒業。22歳で本格的に小説を書き始める。
82年、デビュー作「ジェヴデット氏と息子たち」を出版、トルコで最も権威ある文学賞「オルハン・ケマル」賞を受けた。以後、「静かな家」(83年)、「白い城」(85年)、「黒い書」(90年)と話題作を発表、トルコ内外で多くの支持を得た。
98年にはオスマン・トルコ帝国末期の細密画師を描いた歴史ミステリー、「わたしの名は紅(あか)」を発表、欧州各国の文学賞を受けて世界的ベストセラーになった。同著が邦訳されたのを機に04年に初来日を果たしている。06年3月には「雪」も翻訳された。