兵藤ゆき「ノー・チャイルド・レフト・ビハインド」
2006年 10月 23日
2006年06月08日
2002年1月、ブッシュ大統領が署名した法律、「ノー・チャイルド・レフト・ビハインド(すべての子どもが落ちこぼれない)法」によって、アメリカでは教育に関してさまざまな新しい取り組みがなされているようだ。
この法律は、公教育に連邦政府が今まで以上に関与し、すべての子どもに質の高い公平な教育を提供しようというもの。
アメリカの各州で、学力テストが実施され、その結果が公表(「公立小学校のランキングが発表されるニューヨーク(NY)」「公立小、中学生にも留年制度があるNY」の回参照)されているのもその活動の一環だし、NY市のチュータリング制度(「チュータリング制度」の回参照)もその活動の一環だし、NY市は長年学力の低迷が言われ続けていたので、公教育機関がなんとか学力の底上げをしようと、さまざまなことが行われているのだそうだ。
「その活動自体は評価されることだし、現にNY市は子どもたちの統一テストの成績が上がったらしいのよ」
子どもたちがけん玉に興じている横で、教育問題を熱く語り始めたキャサリンが続ける(前回参照)。
「統一テストにしろ、チュータリング制度にしろ、政府から補助金が出ているっていうけど、費用はぜんぜん足りないらしいのね。ギフテッド・クラスのカリキュラムに影響が出ているのもそのせいだと思うのよ」
彼女の息子も娘もマンハッタンの公立エレメンタリースクール(日本で言う小学校だが、こちらでは幼稚園の年長《キンダーガーテン》から5年生までのところがほとんど)のギフテッド・クラスに通っているのだが、このクラスはいわゆる英才教育プログラムを持つクラスで、入るときには選抜試験がある。
「息子(現在エレメンタリースクール4年生)はキンダーから3年生までスペイン語の授業があったのに、4年生からなくなってしまったし、娘(現在エレメンタリースクール1年生)は入ったときからスペイン語の授業はなくなっていたのよ。おまけに全校生徒でやるような行事はことごとく削られていっているわねえ。勉強も大事だけれど、運動会や音楽会をやることによって、子ども同士、勉強以外のことで競争したり、協力し合ったりすることから、人と人とのかかわり合いや、大勢の人とのコミュニケーションの仕方を学んだりするわけでしょ。そこがすっぽり抜けちゃって、いくら算数や読み書きの成績が上がったって、人としてのバランスは悪くなる一方よねえ」
キャサリンの熱弁は止まらない。
各学校によってカリキュラムが違うし、学校全体で行う行事なども違うので、すべての公立エレメンタリースクールで行事の削減が行われているわけではないのだが、キャサリンの子どもたちが通う学校の現状はそういうことらしい。
アメリカのこの教育改革、子どもたちの学力を保証し、落ちこぼれを出さないようにと関係各所頑張っていて、成果も上がっているようなのだが、なかなか批判が多いのも事実のようだ。
(次回に続く)
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