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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

代理出産「母子」認めず 現実が先行

生殖医療 : ニュース : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


「借り腹」容認4割超

 タレントの向井亜紀さん夫妻が米国人女性に代理出産を依頼して生まれた双子(3)について、最高裁は23日、向井さんを実母と認めなかった。代理出産の是非に踏み込まず、現行法では認められないとする判断だが、一方で生殖補助医療に関する法整備を強く促した。(社会部 小林篤子)

 ■実子届け出が大半

 「海外の代理出産で生まれた赤ちゃんはほぼ全員、実子として日本で出生届が受理されている」

 米国での代理出産を15年以上前から仲介し、これまで55組のカップルに75人の赤ちゃんを授けた「卵子提供・代理母出産情報センター」(東京都)の鷲見侑紀代表はそう話す。

 日本の法律では、出産した女性が母親とされており、代理出産で生まれたことが明らかになれば、実子としては認められない。だが、代理出産が法的に認められているネバダ州などでは、依頼者夫妻を実の両親とする出生証明書が出される。代理出産であることは書かれないため、日本で実子として出生届を出せばチェックされないまま受理されているのが実態だ。

 日本には、代理出産を禁止する法律はない。これまでに根津八紘医師(長野県下諏訪町)が、妻の妹や母に夫婦の受精卵を移植し、代理出産した5例を公表している。これらのケースでは、出産した人の実子として届け出た後、夫婦の子として養子縁組をしているという。

 ■「産む道具」

 日本産科婦人科学会は2003年4月、代理出産を規制する指針を示した。〈1〉生まれた子の福祉に反する〈2〉代理母に身体的危険や精神的負担を負わせる〈3〉家族関係が複雑になる〈4〉社会的に容認されていない――という四つの理由を挙げ、「有償、無償を問わず、代理出産の実施や仲介は認めない」と、会員医師に通知した。

 厚生労働省の生殖補助医療部会が同月にまとめた報告書でも、「代理出産は、人を生殖の道具として扱い、第三者に多大な危険性を負わせる」として、罰則付きで禁止すべきだとする方針を打ち出している。

 代理出産を規制する考え方の背景には、倫理面での問題に加え、妊娠・出産のリスクがある。医療が進歩したとはいえ、日本では出産10万件あたり6人程度の妊産婦が死亡している。海外では、代理母が流産後に死亡したケースも報告されている。50歳代の祖母に娘の子を産ませた根津医師の医療にも、リスクが高いとの理由で疑問の声がある。

 また、米国では、代理母に約300万円の報酬と、同額の手数料を仲介業者に支払うのが一般的。渡航費などを含め、出産までに数千万円かかるのが常識で、「裕福な依頼者が、経済的に弱い立場の代理母を、産む道具にしている」という批判は根強い。

 ■不妊治療30万人

 最高裁決定は、「現実に代理出産という民法の想定していない事態が生じており、社会一般の倫理的感情を踏まえ、立法による速やかな対応が強く望まれる」と指摘した。

 約30万人が何らかの不妊治療を受けているとされる現在、生殖補助医療に対する人々の意識は変わりつつある。

 代理出産には、夫婦の精子と卵子を結合した受精卵を移植して出産してもらう「借り腹」と、夫の精子を妻以外の第三者の卵子に結合させて産んでもらう「代理母」の2種類がある。

 「代理母」により生まれた子供が実子かどうかが争われたケースで大阪高裁は05年5月、公序良俗に反するとして認めず、最高裁も実質的な判断をしないまま高裁決定を支持した。

 一方、向井さんの場合は「借り腹」で、遺伝上の父母が一致するため、違和感を持つ人が少ない。厚労省が03年に約4000人を対象に行った調査では、夫婦の受精卵による「借り腹」の場合、44%が「条件付きで認めて良い」と回答、「認められない」の24%を上回った。

 双子を向井夫妻の実子と認めた昨年9月の東京高裁決定を受け、政府は同11月、生殖補助医療に関する法整備に着手する方針を固めた。代理出産についても、日本学術会議に、その是非や、実施する場合の基本的なルール、親子関係のあり方などについて審議を要請しており、来年には答申がまとまる予定だ。新たな枠組み作りに向けた動きが、ようやく具体化してきている。

    ◇

 結論先延ばしするな

 「日本の司法を正面からノックしたら、何かが変わるかもしれない」。妊娠中に判明したがんで子宮を摘出し、代理出産の道を選んだ向井さんの訴えは、人々の心を打った。黙っていれば実子として出生届が受理されている現状の中、あえて公表して問題提起をした勇気には、頭が下がる。

 だが、代理出産を含む生殖補助医療がはらむ問題は、個別のケースに対する感情論で是非を決められるものではない。医療の進歩と生命倫理との間で、我々は、何をどこまで許容するのか。議論の結論を、いつまでも先延ばしには出来ない。

 生殖補助医療

 不妊カップルに子供が授かるよう補助する医療。代理出産のほかに、精子を人工的に女性の体内に注入する「人工授精」や、体外で精子と卵子を受精させ、受精卵を子宮内に戻す「体外受精」などがある。

(2007年3月24日 読売新聞)
by miya-neta | 2007-03-24 10:14 | 科学/技術