「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

いじめと教育委員会(5) 長野県教委こどもの権利支援幹・前島章良さんに聞く…「実体験」もと

教育ルネサンス : 教育 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


 いじめの被害者の父が教育委員会職員として対策に走る。

 握りしめた拳を、今は心の中にしまってある。

 「悔しいですよ。いい大人が子供を傷つけて、ふざけるなと言いたい気持ちをぐっと抑えて、校長や教師に『まず話し合ってみませんか』と提案しています」

 長野県教育委員会こどもの権利支援幹の前島章良さん(52)は、2年前に県教委内に「こどもの権利支援センター」を作り、現在3人の職員と、いじめの相談や、予防事業に取り組む。

 学校側がいじめの事実を認めず、相談者が対立感情を抱えている場合が多く、前島さんらは相談者宅に出向いて話を聞き、学校や市町村教委にも足を運ぶ。

 センターが校長や教師を罰したり異動したりすることはない。保護者と学校に「その子の最善の利益」を考えてもらい、問題解決に向けて支援する。

 「学校現場は、上からものを言うのではなく、下から支える必要がある」

 職員にそう説くのは、自らの体験を踏まえている。かつて前島さん自身が、学校や市教委と対立する保護者の1人だったからだ。

     ◎

 1997年1月、須坂市の公立中学1年だった長男、優作さん(当時13歳)が、いじめを訴える遺書を残して自宅で自殺した。

 営業マンとして仕事が面白くて仕方のないころ。話を聞いてやれなかったと自分を責めるとともに、真相を求めて学校や市教委を追及し続けた。

 「3年間、学校や教育委員会を糾弾するばかりでした。でも気付いた。それでは相手は殻に閉じこもるばかりで解決にならないと」

 2003年、「痛みを知る人に教育行政を変えてもらいたい」と当時の田中康夫知事が県教育委員に選任しようとしたが、議会が否決。翌年、任期4年の県職員になった。

 センターを設置したのは、保護者と学校の間の調整役が必要と痛感したからだ。だが、市町村教委は学校寄りの立場になることが多く、第三者的な視点を持ちづらい。また、受けた相談を学校や市教委という「当事者」に差し戻してしまう、従来の県教委や教育事務所の姿勢を変えたかった。

 一昨年は110件、昨年は156件の相談に対応、相談者のほとんどに前向きな変化が見られたという。

 中3の春にクラスのいじめで不登校になった経験を持つ女子高生(16)は、前島さんらの仲介で、校長がいじめを認め、立ち直った1人だ。「わかってくれる人がいるという安心感が勇気になる。相談しなければ違う人生だった」とふり返る。


     ◎

 いじめがあったかどうかをあいまいにしてきた教委や学校の態度が、多くの犠牲を生んできたと考える。

 「教師はいじめた子、いじめられた子の双方に問題があると考えがちだが、それでは絶対、解決にならない。いじめを受けた子をまるごと認め、過ちはただしてほしい。それができない学校を、市町村教委は責任をもって指導するべきだ」

 市町村の教育委員にも「地域住民の声を聞いて学校に改善を求める本来の仕事をしていない」と不満をぶつける。

 センターの考え方が理解され、県教委内の意識も少しずつ変わってきた。増え続ける相談に対応するには、教育事務所や市町村教委にも受け皿が必要だと実感する。同様の相談機関が全国各地に設置されつつあるのはうれしい。

 「僕は1人でも多くの子を救いたいんです」

 聞き手・松本由佳(写真も)

 まえじま・のりよし 2004年、県教委にこどもの権利保護推進幹として採用された。こども支援課長を経て現職。2000年に須坂市を相手取って起こした損害賠償訴訟は05年、市に再発防止を約束させることで和解している。

(2007年5月5日 読売新聞)

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by miya-neta | 2007-05-05 09:55 | 教 育