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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

子の殺意、なぜ親へ…他人化する家族 格差のストレス

事件裁判|社会|Sankei WEB


 ■酒鬼薔薇事件の影

 また、子の殺意が親に向かった。福島県会津若松市で高校3年の男子生徒(17)が母親を殺害し、切断した頭部を持って自首した事件。子が親を殺す事件は一昨年から急増している。親への殺意はどこから生まれるのか。「濃密過ぎる母子関係」「家族の他人化」…格差社会に原因を求める指摘も出される。社会のありようとは無縁でいられない家庭の中で、もがいているのは子か、それとも親のほうだろうか。

 ≪年10件以上≫

 警察庁によると、14~19歳の少年が父母(養父母含む)を殺害、または殺害しようとした事件は、平成13年以降年間10件未満で推移していたが、17年に17件と急増。昨年も1~11月の11カ月間で12件。容疑者となった少年が供述した動機は事件によってさまざまだが、不可解な内容も多い。

 水戸市では16年11月、無職の長男=当時(19)=が教師だった両親を殺害。動機は当初「両親への反発」とみられたが、地裁判決は「両親を殺害すれば、しつけの厳しい祖父への恐怖心を克服できる」と認定した。

 17年6月には東京都板橋区で高校1年の長男=当時(15)=が、両親を殺害後、室内にガスを充満させて爆発させた。父親への憎悪が動機だが、「母親だけを残すのはかわいそう」と母親も巻き込んだ。18年6月には奈良県田原本町で、有力進学高校に通う長男=当時(16)=が自宅に放火。2階で寝ていた母や弟妹の3人を死なせたが、家裁は「父親に暴力を振るわれ、性格や資質上の偏りを生じさせた」と保護処分に。

 ≪濃密な母子≫

 親への反発は誰でも経験がある。親子が取っ組み合いのけんかをすることもおかしいことではない。だが、それは具体的な殺意とは一線が画されてきたはず。「反発」が「殺意」へと容易に発展する理由を、精神科医の町沢静夫さんは「家族の他人化」と指摘する。「子供がゲームで部屋にこもり食事を別々にとり、家族の結びつきが弱まっている。親に他人のような感情を持ち、暴力を振るうのに抵抗がなくなっているのでは。家庭内の事件を防ぐには一緒に食事をし、お互いの近況を話し、昔は当たり前に行われていた家族のコミュニケーションを増やす必要がある」

 一方で母と子の濃密な結びつきと、反比例して父親の存在の希薄化を指摘する声も。「かつては進路など人生の転機には父親が登場し、子が父とぶつかることは珍しくなかった。しかし最近は人生の転機にさえ母親の存在が目立つ」と言うのは新潟青陵大の碓井真史教授(社会心理学)だ。

 さらに最近の格差社会観や「勝ち組」「負け組」という風潮の影響を問題視する見方もある。ひきこもりの子供の再出発を支援するNPO法人「ニュースタート事務局」の二神能基代表は「親子双方が『勝ち組にならなければ』という強いプレッシャーを受けている。子供が学校や勉強につまずき閉塞(へいそく)感を感じているときに『勉強しろ』と『勝ち組教育』を押しつけられると、親に対して攻撃的になることがある」と語る。

 ≪要因は…≫

 「ギリシャ神話の時代から父親や兄弟と殺し合うことは珍しくなかった」。そう解説する千葉大教育学部の明石要一教授(教育社会学)も「最近の親殺害では母親が犠牲になるケースが目立つ。背景を慎重に解明しないといけない」と要因をつかみきれていない。

 一方で作家の高村薫さんはまったく別の見方を示した。「神戸の酒鬼薔薇(さかきばら)事件(児童連続殺傷事件)が若者たちの心に刻んだ影響を思う」。そのうえで「会津若松の男子生徒は特別な感性の持ち主では。司法の場でどれだけのことが明らかになるか、冷静に見守るべき。事件には個別の事情がある」と語り、「分析したとしても、普遍化はできない」と指摘した。

(2007/05/17 08:36)
by miya-neta | 2007-05-17 08:36 | 社 会