宇宙の太陽光をレーザー光に変換、地上へ 阪大など開発
2007年 09月 04日
◆「ラオ博士は太陽光エネルギーの夢を見るか」
2007年09月04日
おわん形をした模擬太陽ランプ(左端)から右方向に出た光が装置の中でレーザー光に変わり、手前に照射される=大阪大レーザーエネルギー学研究センターで
宇宙空間で集めた太陽光を、大気に吸収されづらいレーザー光に変えて地上に送り、発電などに利用する――。そんな「宇宙エネルギー利用システム」の要となる高性能レーザーの開発に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、レーザー技術総合研究所(大阪市)、大阪大の研究グループが成功した。太陽光からの変換効率を4倍以上に高めた。4日に札幌市で始まった応用物理学会で発表する。
模擬太陽ランプを使った実験で、新開発のセラミック材料を使い、大出力のレーザー光に増幅することに成功した。これまで、数%~10%程度だった太陽光からの変換効率を42%に高めた。波長の幅広い太陽光を吸収できるクロムと、太陽光を効率よくレーザー光に変換できるネオジムを、セラミック材料に高密度に注入して実現した。
太陽光は、大気や雲に吸収され、地表に届くのは3割程度。一方、宇宙では、昼夜や天候に左右されずに利用できる。このため、宇宙からレーザー光で地表に運べば、利用可能なエネルギーは、地表の5~10倍になる。
JAXAは2030年を目標に、100~200メートルの反射鏡を備えた人工衛星を打ち上げ、レーザー光に変換して地上に発射、発電や水素製造に利用する研究を進めている。当面の目標は変換効率50%だ。米国では米航空宇宙局(NASA)がこの分野から撤退、日本が開発の主導権を握る。
JAXAの森雅裕・高度ミッション研究センター長は「計画実現への大きなハードルを越えた。基盤技術はすでにそろっており、既存の発電より経済性のあるシステムを目指す」と話している。