どうする民主党/総裁選を機に戦略再構築を
2007年 09月 19日
自民党総裁選が「ポスト安倍政治」の道筋を探る政治的パフォーマンスとして注目を集めれば集めるほど、少なからぬ世論は、先の参院選から民主党を後押ししてきた風向きに微妙な変化を感じ始めてはいないか。
だとすれば、同党は安倍路線との対決という基軸をどこに移し臨時国会をどう位置づけるのか、政権奪取に向けた戦略の見直しを迫られよう。それが「次の首相選び」を軸とする今の政局のもう一つの注目点である。
福田康夫元官房長官と麻生太郎党幹事長が出馬した総裁選は、党所属の国会議員と都道府県連しか投票できない内向きの選挙にもかかわらず、両候補による各地の街頭演説会などは思いのほかの関心を集めている。
唐突で無責任な安倍首相の退陣劇が、その後継選びに国民の興味を呼び込んだのは確かだ。
そこでは福田、麻生両氏が安倍政権との距離感の違いを見せながらも、脱安倍政治をにじませて争っている。福田氏の「派閥談合」や麻生氏の「安倍内閣への政治責任」など負の影はかき消され、「安定か強さか」のリーダー論まで飛び出した。
この総裁選は安倍政治に不満を募らせていた国民世論をロンダリング(洗浄)する装置として働き出したとの見方もある。
それが自民党の「復元力」として国民に認知されつつあるとするならば、民主党にとっては少々厄介なことであろう。
優勢が伝えられる福田氏が従来路線を修正して掲げる対アジア外交や靖国問題などへの対応は民主党に近い。このため同党内には「福田政権になれば、攻め方が難しくなるのではないか」との懸念も出始めている。
民主党がこうした政治的な雰囲気への埋没を避けて、戦略を見直すには何が必要なのか。
まずは国民との対話である。
共同通信が安倍首相退陣直後に行った全国世論調査では、テロ対策特別措置法によるインド洋での海上自衛隊の給油活動について、「延長すべきだ」が47.9%と、「延長すべきでない」(42.5%)を上回った。
延長に反対する民主党が新政権と対決するにはどうしてもこうした世論を説得することが必要だ。在るべき日米関係や国際貢献とは何か。日米基軸か国連中心路線か。あらゆる機会を通じ、これらを国民に丁寧に説明し理解を得なければなるまい。
もう一つは、自民党がどんな政権になろうとも、民主党が臨時国会で政策的な主導権を一貫して確保し続けることである。
同党は既に年金保険料流用禁止法案を野党が多数の参院に提出し、全政治団体の一円以上の支出に領収書添付を義務づける政治資金規正法の再改正案も参院に出す方針だ。
このうち、福田氏が「1円以上」に慎重な姿勢を示す政治資金規正法再改正案で成果を挙げれば、「政治とカネ」で具体的な数値目標の実現を求める世論の期待に応えることになる。
「ねじれ国会」は自民、民主両党が政権党の信頼感を競う決戦場だ。重要政策で得点を積み重ねられなければ、民主党に政権への風が吹くことはない。
2007年09月19日水曜日