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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

「小さな学校」論 転換の時

ニュース : 教育 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


 「わけいっても わけいっても 文書の山」。俳人、種田山頭火の代表句のパロディーだ。教師がパソコンに向かう手を休め、一句したためているイラストに添えられている。教師の顔には、疲れがありありとうかがえる。そして、やはり山頭火のもじりの「しごとすがたの しぐれていくか」となる。

 この“作品”を宮崎県の小林市スクールサポートセンター発行パンフレットで見つけたとき、笑ってしまった。諧謔(かいぎゃく)がある。教師に対する客観的な視点がある。作者を探して電話した。

 同市立東方小学校事務職員、甲斐暢夫さん(42)。「夜遅くまで書類と格闘している先生を見て、お坊さんの苦行に近い、と思った。それで、僧侶だった山頭火になぞらえて……」と語ってくれた。

 実際、先生は忙しい。それも、授業以外の事務的業務、生徒指導、補習・部活動などに時間をとられている。

 本末転倒の状況を改善するため、同市の小中学校事務職員は、教師の仕事の支援システムを構築しつつある。今春、職員の共同実施組織として同センターを発足させた。甲斐さんが作ったパンフレットは、公文書管理、集金業務の一元化、就業体験活動での連絡など、センターが進めつつある支援システムを紹介するものだった。

 こうした努力はもちろん必要だ。では、それで教師の仕事は楽になるか。萩原重憲・同センター事務局長(56)は、「限界がある。家庭の教育力の低下、小学校からの英語教育など、様々な課題が生まれている」と指摘する。

 来年度予算をめぐる攻防が続いている。財務省作成の資料は、公教育支出の対GDP比は主要先進国に比べて低いことを認めつつ、「しかし、わが国は、そもそも小さな政府であり、子どもも少ない」として、一般政府総支出の対GDP比が低いことなどを理由に、教職員の削減を主張している。

 「小さな政府」論を教育に当てはめると「小さな学校」論となる。確かに、「子供を家庭、地域に帰せ」をスローガンにした学校5日制の実施、教育内容を削減した「ゆとり」教育には「小さな学校」の要素があった。

 だが、学校から切り捨てられた教育を家庭、個人の自己責任とした結果が、学力格差ではなかったか。「個」を超える価値のあることを明示したのが改正教育基本法ではなかったか。

 激しい学力論争を経て、社会は今、学校の役割の大きさを認める教育観に転換してきている。転換を実現する基盤整備が必要ではないか。

(2007年11月24日 読売新聞)
by miya-neta | 2007-11-24 21:45 | 教 育