「コリア国際学園が来春開校 理事長に姜尚中東大教授」
2007年 09月 27日
2007/09/27 12:56更新
在日韓国・朝鮮人の子供を対象にした中高一貫のインターナショナルスクール「コリア国際学園(KIS)」が来年4月、大阪府茨木市に開校する。民族教育を中心とした既存の民族学校とは一線を画し、「現役合格」を“看板”に大学進学にも力を入れるのが最大の特徴。韓国語を中心に日本語、英語で授業を行い、学習指導要領にとらわれないカリキュラムを組むという。理事長には政治学者の姜尚中・東大教授が就任する予定で、在日社会の注目を集めている。
■民族学校と一線
在日韓国・朝鮮人の子供を対象にした民族教育は、戦後1世が設立した朝鮮学校などで行われてきたが、在籍する児童生徒数は年々減り、学校の統廃合も進行。
文部科学省によると、朝鮮学校の場合、平成15年の90校、約1万2000人から18年には79校、約1万500人に減少。民団系も各種学校を含めて4校のみで、学齢期にある子供たちの大半が日本の学校に通っているのが現状だ。
在日4世、5世の登場による世代交代や、国際結婚や仕事などのために来日した「ニューカマー」と呼ばれる人たちが増えるなど、在日社会も多様化しており、時代のニーズにあった学校を求める声が2世らの間で強まっていたという。
民族学校出身のKIS設立準備委員会メンバーは「民団系、総連系どちらの学校にしても、どうしても国家を意識せざるを得ない。“限界”がある」。
姜さんも「在日コリアンが最も多い大阪では、民族団体などとのしがらみも強い。そこからKISの構想が自然発生的に生まれたことの意味は大きい」と指摘し、大阪に開校する意義を強調。「在日コリアンは国と国のはざまで苦しんできた。北か南かではなく、国境をまたいで活躍できる『越境人』を育成したい」と話す。
■在日オールスター
生徒用の制服はすでに完成し、推薦入試の受け付けもスタート。来月10日には校舎の着工式を迎える。大阪や東京、京都などで開催した説明会やシンポジウムには延べ約700人が参加するなど関心が高まっている。
その要因の1つが、KISの役員に名を連ねる著名人たちの存在だ。姜さんをはじめ、作家の梁石日さんや詩人の金時鐘さんら在日の“スター”が勢ぞろいし、日本人からもイラストレーターの黒田征太郎さんや、「ゆとり教育」の旗振り役を務めた元文部官僚で現在、京都造形芸術大学教授の寺脇研さんらが加わる。
特別授業などではこうした人々が教壇に立つこともあるといい、大阪での説明会に参加していた保護者は「姜さんの考えには以前から共感していたし、梁さんの作品も好き。安心して子供を任せられる」と話す。
朝鮮学校や中華学校などと同じ「各種学校」として年内に認可申請するが、初年度は間に合わないため、NPO法人が運営する形となる。
■エリート教育?
授業は1日7時限で、土曜日も実施。夏休みや冬休みも短めで、年間の授業時間数は日本の公立学校の約1・3倍を確保する。狙いは国内外の大学への「現役合格」だ。
特に力を入れるのが語学で、英語は6年間を通して週に12時間学習。韓国語は初心者でも対応できるよう中学1年次に集中的に学び、卒業時には「自分の主張を語れるレベル」にまでもっていく。受験教科の指導などでは大手進学塾との連携も図るという。
こうしたカリキュラムには「コリア版エリート養成校」と批判する声もあるが、姜さんは「実践的な学力をつける試みであり、勝ち組のための学校にするつもりはない」と指摘。
「既存の団体などにKISに反発する動きがあるのは承知しているが、『こういう学校をつくりたい』『ここで学びたい』という人の存在や思いまでは否定できない」と強調し、「KISの社会的評価は、どういう学生が巣立っていくかで決まる。3年後、6年後が勝負」と話している。