「せんたく」発足/政策軸の再編促せるか
2008年 01月 27日
「せんたく」とはまた思い切った名称をつけた。次期衆院選を国民が政策本位で未来を「選択」する機会にし、それを阻む仕組みや勢力はすべて見直す、つまり日本の「洗濯」をしたいという意味を込めたという。
政治改革、分権改革の提言に取り組んできた「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)を母体とする運動組織「地域・生活者起点で日本を洗濯(選択)する国民連合」が2月3日に発足する。その略称が「せんたく」。発起人で、21世紀臨調の共同代表を務める北川正恭前三重県知事、佐々木毅前東大総長らが20日発表した。
「せんたく」は、次期衆院選に向けて与野党の国会議員が党派を超えて政策を議論する場を用意する。そこで徹底的に議論して合意できたものは具体的な政策として実施させ、1致しなかったものは各党のマニフェスト(政権公約)に掲げ争点を明確にして衆院選を戦うよう求めるという。
運動のキーワードは「脱中央集権、脱官僚」「国民の意識改革」だ。既に相当数の国会議員から、議論に参加するという内諾を得ているという。
その狙いは結構だが、疑問もある。国の政策を決める場が国会を離れ、外部の民間団体が設定した舞台に移っていいのだろうか。国会論議の形骸(けいがい)化をさらに進めてしまうのではないかという懸念がある。
だが、「せんたく」の認識は違うようだ。北川氏は「各党は衆院選に向けて地方分権、消費者重視、環境政策を掲げているが、政党の看板を背負っているので国会論議が進まない。超党派の議員連合をつくり、党のよろいを脱いで徹底論議をすべきだ」と説明する。昨年の大連立騒ぎのように政策抜きでの離合集散が起きかねないことを警戒しており、あくまで「政策重視」を強調したいようだ。
また、「せんたく」は議論の場をつくるだけで、衆院選で候補の擁立や推薦など政局につながる動きはしないという。しかし、理念に賛同する議員を結集し、国民に対し政策を軸にした選択を迫るのであれば、その思惑とは裏腹にいや応なく政界再編を促す動きとなろう。
北川氏は「政治はさまざまな要素で成り立つ。(議論の過程で)権力闘争もあるだろうが、限定はつけない」と話す。政治の現状を見ると、自民、民主の二大政党はそれぞれ安保や税制、環境、道路、地方政策などで党内に違う主張の勢力を抱えて、行き詰まっている。「せんたく」の狙いは案外、その整理、統合にあるのかもしれない。
国政が「せんたく」の狙い通りに進むかどうかは世論の動向とかかわるだろう。その意味では、注目度の高い東国原英夫宮崎県知事らを発起人に加えたのは、国民にメッセージを発信する方策としてはいいだろう。
今年は政治改革論議が起きて20年、衆院選にマニフェストが導入されて5年という節目の年だ。「日本の将来を左右する大事な年」(北川氏)の初めに、「せんたく」が提起した新しい運動の行方に注目したい。
2008年01月27日日曜日