米兵暴行事件、普天間移設に暗雲
2008年 02月 12日
2008.2.12 19:31
沖縄の米海兵隊員による女子中学生暴行事件を受け、政府が進める在日米軍再編にも暗雲が漂い始めた。普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で、政府と沖縄県は移設先となる名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部の環境影響評価(アセスメント)調査の月内開始で合意している。ただ、繰り返される同種の事件に対し、政府が抜本的な再発防止策を打てなければ、再び県民世論の反発を受け、移設計画が暗礁に乗り上げる可能性もある。
福田康夫首相は12日午後の衆院予算委員会で、「米国に再発が絶対ないような要請を強くしなければならない」と事件を批判。野党からも「不祥事が繰り返され、大変遺憾だ」(民主党の小沢一郎代表)と一斉に反発の声が上がった。
政府は山口県岩国市長選で空母艦載機移転容認派が当選したことで「米軍再編が着実に進む環境ができた」(町村信孝官房長官)と期待感をもっていただけに、事態の沈静化に追われている。
政府・与党幹部の脳裏をよぎっているのは、平成7年に沖縄で起きた米兵による少女暴行事件だ。この事件を受けて沖縄では米軍基地返還運動が高まり、普天間飛行場の返還で合意するきっかけとなった。
石破茂防衛相は12日の記者会見で、日米が共同で再発防止策を検討する考えにまで踏み込んだ。背景には、米軍による再発防止策が一向に実を挙げていないことへの根強い不信感がある。
膠着(こうちやく)状態にある米軍再編を前に進めることは昨年9月に発足した福田内閣にとって最重要課題の一つで、関係自治体に対し、対話重視の政策を推し進めてきた。しかし、駐留米軍への信頼が揺らげば、こうした政府の努力も水泡に帰す。
藪中三十二外務事務次官は12日、在日米大使館のドノバン臨時代理大使を呼び、綱紀粛正を要請。13日には小野寺五典外務副大臣を沖縄県に派遣し、米軍側との折衝に当たらせる考えだ。