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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

迷惑メール巧妙化…家庭のPC乗っ取り、海外発

連載 : 企画・連載 : ネット&デジタル : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


 総務省は「迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会」が16日に出した中間報告案を受け、迷惑メールへの対策強化に乗り出す。来年の通常国会で迷惑メールを規制する「特定電子メール送信適正化法改正案」の提出を目指す。

 ただ、手口が悪質化、巧妙化する中、迷惑メール業者とのイタチごっこが今後も続くとの見方も強く、迷惑メールが一掃されるかは不透明だ。

(経済部 西原和紀、山本貴徳)

1日数十億通
 迷惑メールには、出会い系サイトの勧誘などを中心とする広告・宣伝メールのほか、身に覚えのない料金を要求する架空請求メール、偽のサイトに誘導して個人情報を盗むフィッシングメール、コンピューターウイルスが添付されたウイルスメールなどがある。

 総務省の分析では、迷惑メールの送信件数は、国内で1日に数十億通に上る。同省が所管する「迷惑メール相談センター」の調査では、同センターに設置したモニター用パソコン1台に来た迷惑メールの件数は2005年度上半期は約4800通だったが、06年度下半期には5倍超の約2万5000通に急増した。

 一般の利用者の場合は、通信事業者やネット接続業者などが迷惑メールを取り除く作業を行っているため、手元に届くメールは横ばい傾向となっているが、送信数は増えているのが実情だ。

 今年1月には、架空名義のメールアドレスを使用して、出会い系サイトを宣伝する約54億通のメールを送っていたサイト運営会社の社長らが、千葉県警に適正化法違反で摘発された。信用のある企業を装ったメールも多く、今年7月には新生銀行をかたったフィッシングメールが送られる事例も発生している。

 現行の規制では、送信者は、受信者に迷惑メールとわかるようにメールの題に「未承諾広告※」と明記すれば、勝手にメールを送りつけることができる。その後、受信者がメールを継続して受信するかを選ぶ「オプトアウト方式」と呼ばれる仕組みだ。

 しかし、こうした対策では効果が出ないため、研究会は新たに受信者の承諾なしの送信を原則として違法とする「オプトイン方式」の導入を打ち出した。

「ゾンビ」が送信
 やっかいなのは、迷惑メールの多くは、本人も気づかないまま、一般市民のパソコンから送信されていると見られている点だ。

 パソコンが「ボット」と呼ばれるウイルスに感染すると、そのパソコンは、悪意を持った送信者などの意のままに操られる。こうして出来上がったパソコンを「ゾンビパソコン」、操られているパソコン群を「ボットネット」と呼び、所有者が気づかないうちに、迷惑メールの送信者の指示で、迷惑メールを他者に一斉に送信する。全世界でやり取りされる迷惑メールの大半がボットネット発とも言われている。

 こうした手口で送信されたメールは、「送信業者をきちんと割り出せるのか課題が多い」(ウイルス対策ソフト大手)のが現状だ。新たな規制で実効性が上がるのか疑問視する声もある。

アドレス売買
 現状では日本の法令が及ばない海外発の迷惑メールの増加も問題を深刻化している。「迷惑メール相談センター」の調査では、2007年上半期のパソコン向け迷惑メールのうち、海外発が約95%を占め、06年上半期の72%から急増した。経産省所管の日本産業協会の調査では、07年7月に受信した海外発の迷惑メールのうち、中国発が55%で最も多かった。

 総務省は海外発でも国内で受信した迷惑メールは規制の対象にする。迷惑メールの情報交換など国際連携を強化し、外国の警察当局へ摘発を依頼するケースも視野に入れている。ただ、対策強化に乗り出す総務省も「規制強化はモグラたたきみたいなものだ。すり抜ける業者が必ず出てくる」(幹部)と本音を漏らす。

 迷惑メールの横行の陰には、メールアドレスを売買する業者の存在も指摘されている。インターネット上のホームページで、「1件0・2円」「100万件9万円」などと料金表を掲示している業者もいる。

 メールアドレスはフルネームが判明するケース以外は原則として個人情報保護法の適用外で、売買を取り締まるのは難しい。被害から身を守るためには「不用意にメールアドレスを書き込んだり、いかがわしいサイトに接続しない」(インターネット接続業者のニフティ)などの自衛策も必要だ。

封じ込めへ、国際連携、厳罰化
 迷惑メールの多くは、国境を越えて広く行き交っており、日本も諸外国との連携を通じての対策強化に乗り出している。

 総務省と経済産業省は7月、ドイツ連邦経済技術省との共同声明に署名し、迷惑メールに関する情報交換や関係者への啓発活動の支援などを行うことを決めた。日本がこうした声明に署名するのは、フランス、英国、カナダに続き4か国目となる。このほか、国際電気通信連合(ITU)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)など多国間でも定期的に意見を交換している。総務省は、今後も2国間と多国間の枠組みで協力関係を築いていく方針だ。

 一方、日本が連携を深めている諸外国は、すでに受信者の承諾なしに広告・宣伝メールを送ることを禁止する「オプトイン方式」を導入しており、日本よりも対策が強化されている。

 罰則については、米国や日本のように拘禁・懲役を含めるか、罰金のみとするか各国で分かれる。しかし、罰金の水準は、米国の最高約5800万円など、日本の100万円よりも高額に設定されているケースが多い。摘発した業者に経済的な打撃を与えることで、悪意の送信者の意欲をそぐのが狙いで、世界的に厳罰化の傾向が強まっている。

匿名社会の「負の象徴」
 迷惑メールがはびこるのは、郵便と比べ、低コストで大量に、自動で発信できるからだ。

 携帯電話を標的にしたメールは、下火になったとされるが、NTTドコモは1日約10億通のメールのうち、約8億8000万通を迷惑メールとしてブロックするなど、利用者の目に触れない戦いを続けている。

 ネットの発達で、情報のやりとりは便利になったが、一方でブロックする通信業者などの手間や、個人情報の流出などに警戒を強いられる一般市民の不安など社会に与えるマイナスの側面も見逃せない。迷惑メールは、匿名社会の「負の象徴」ともいえる。(西原)

フィッシング

 金融機関などを装って不特定多数にメールを送り付け、本物そっくりの偽サイトに誘導した上で、パスワードやクレジットカード番号などの個人情報を入力させる詐欺の手口。盗んだ個人情報を悪用し、大量の商品を購入するといったケースが多い。


(2007年10月17日 読売新聞)
by miya-neta | 2008-02-16 23:20 | 科学/技術