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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

ネットいじめに支援の輪

インタビュー : ネット&デジタル : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


 ネットでのいじめが悪質化し、時には犯罪まがいにまで凶悪化している。いじめの被害者、不登校、引きこもりなどに悩む親子の相談をネットで受ける「全国webカウンセリング協議会」には年間3000件以上の相談が寄せられる。同協議会の安川雅史理事長にネットいじめの現状と対策を聞いた。

悪質化するネットいじめ

ネットいじめに支援の輪_b0067585_20104346.jpg安川雅史 やすかわ・まさし
全国webカウンセリング協議会理事長
1965年生まれ、北海道出身。大学卒業後、北海道の公立、私立高校で英語教師。94年大検(現・高卒認定)専門予備校「第一高等学院」教師に。 2004年、カウンセラーとして独立、NPO法人教育制度研究フォーラムの相談員・カウンセリング講座講師として活動を始める。05年全国webカウンセリング協議会設立、理事に就任。07年から理事長。

http://www.web-mind.jp/

――ネットでどんないじめがあるのですか。

安川 大人にとって、インターネットはパソコンで使うものですが、子供にとっては、ケータイです。ちょっと携帯電話でメールを打ってみてもらえますか。

――あまり得意ではないんですが(と、右手で携帯電話を持つと)。

安川 大人はたいてい右手で持ちますが、子供たちは、左手で器用に使います。食事しながらでもメールを打てるように、です。ケータイを片時も離さず、5分以内に返信しないと信頼関係が崩れるというルールでケータイに縛りつけられています。

 そこでは、すぐに返信しない子、絵文字・顔文字やデコメールを使いこなせない子がいじめの対象になりやすい。ちょっとしたミスで間違って返信したことがきっかけになることもあります。

 いじめられる子は「いじられキャラ」といいますが、彼がトイレに行くと、グループで付いていく。トイレで、ケータイでメールを打つふりをして、彼が用を足しているところを写真に撮る。残りは騒いでシャッター音をかき消し気づかれないようにする。その写真をほかの子どもあてのメールに添付して、「10人に転送しないと今度はおまえを同じ目に遭わせる」と脅すと、あっという間に写真はネット上に広まっていきます。「チェーンメール」というもので、本人は、もう学校に行けません。

 ほかには、何種類ものメールアドレス(サブアドレス)を取得して中傷メールを送りつける「なりすまし」があります。送信時間設定もできるので、しょっちゅう、とんでもない時間にもメールが送られてくる。発信元が一人でも、受け取った方はクラス中の何十人から次々と中傷されたと思い、外へも出られなくなる。

 「学校裏サイト」には、被害者の写真や名前、住所、メールアドレスなどが勝手に掲示され、そこに匿名の誹謗中傷が続々書き込まれています。文科省調査で3万8000件と調査結果が出ましたが、まだまだ氷山の一角です。30万件は超えるのではないでしょうか。また、女子中高生が自己紹介のために作るホームページ「プロフ」には、勝手に被害者の顔に別の写真を合成するなどして、個人情報をさらしたうえで、援助交際をしているような紹介文を書き込む。本人がいくら否定しても、援助交際しているという話が学校で既成事実化して一人歩きしてしまう。本人が知らないところで勝手に載せられて、作ってなくても作ったことになってしまい、噂は消えません。転校せざるをえなくなってしまう。

――対策はあるのですか。

安川 「なりすまし」メールの場合、サブアドレスは無料で、必ず広告がつきます。携帯電話でURL付きメールを拒否する設定にするなどして、なりすましメールを受信しないように設定できます。こんななりすましメールなんか受信したい人はいないので、最初から受信拒否設定にしてあればいいのに、携帯電話はそうなっていません。どこにも書かれていないし、説明もありません。

 「チェーンメール」は、どこで止まったかなんて、絶対にわからないのですから、転送する必要は全くありません。でも、子供たちはそんな知識がないので送ってしまう。日本データ通信協会が転送先(http://www.dekyo.or.jp/soudan/chain/tensou.html)を用意していますから、チェーンメールが来たらそこへ送ればいい。

 プロフの場合、変なメールが届き始めるので、「どこで私のことを知りましたか」とだけ返信して、まずそのページを特定することから始めなくてはなりません。学校裏サイトもパスワードがかかっていて、それを知らないと見られないものが多く、まず特定から始める必要がありますが、ページが特定できれば、学校裏サイトやプロフで問題があるページを削除するよう、プロバイダーに依頼できます。ただ、そのときも依頼の仕方があり、URLと、問題点を個別具体的に示すなど、ポイントがあります。

――そうした知識を学校の先生は持っているのですか。

安川 学校に少なくとも一人は、ネットいじめに対応できる先生がいてほしいと、4月から「ネットいじめ対応アドバイザー」の資格認定制度をスタートします。

――どんな制度ですか? 費用はどのくらいかかりますか?

安川 テキストで、ネットの基礎知識から当協議会が対応してきた相談の実例をもとに具体的な対処法を学んでいただきます。その後認定試験を受験していただき、合格するまで試験を受けていただきます(再受験料は無料です)。また、学校裏サイトの見つけ方、様々な削除方法など…携帯電話の取扱いに自信がない方向けには講習会も開催する予定です。講習会では、携帯電話の基本技術から携帯電話を使ったネットいじめの対処法を実技を交えて習得してもらいます。合格し認定資格を取得された方へは、随時、最新のネットいじめや解決方法の情報をメールなどでお知らせし、日々刻々変わる新たなネットいじめについても対応出来るスキルを身に付けていただきます。資格取得後も、当協議会でサポート体制を取り、相談内容などで困った場合はアドバイスします。テキスト、受験料、認定証で費用は1万円です。

 このほかに、学校や法人向けに「メンタルケアトータルサポート」サービスも始めます。生徒や保護者、教師のカウンセリングに、教師向け研修をセットにして総合的な支援を行います。


メール1本から悩み解決へ

ネットいじめに支援の輪_b0067585_20144388.jpg講演会は年に約100回、全国でネットいじめの実情を訴える

――全国webカウンセリング協議会では、いじめ、不登校、引きこもり、ニートなどに悩む親や子供の相談をメールで受けていますね

安川 電話、手紙の相談も受け付けていますが、子供たちからはネット経由の相談が圧倒的です。もともと、カウンセラーとして相談に乗っていましたが、対面相談では相談を受ける方も相談する方も、限りがあります。

 どんな相談でも受けられるインターネットの存在で、もともとこれらの悩み解決に携わってきたNPO法人が集まって、2005年に協議会を設立し、ネット相談を始めたことで、悩みを抱える人たちにカウンセリングが近づけました。

 引きこもっている子供は、外とのコミュニケーションを断っていますが、ネットだけは使っているケースも多く、こうした子供たちからの相談も受けやすくなりました。

――カウンセラーの養成にも力を入れているようですが。

安川 カウンセラー養成講座を開いています。講座などで資格をとったカウンセラー150人が協議会の相談を受け、相談者がカウンセラーを選べて、評価する仕組みも取り入れています。

――カウンセリングで、深刻なケースが解決できるのですか。

安川 5年間も親と全く口を聞かない子や子供の暴力で歯や骨を折った親などが相談してきました。姉が自殺した翌日に弟が同じようになったと相談にきた人は、「あと一日早くここのことを知っていれば、上の子は死ななくて済んだ」と言っていました。カウンセリングで話していく中で、原因を探していきます。家族を巻き込んだ相談になります。

 まず、本人と信頼関係を作り、本人に寄り添っていくと、3回くらいのカウンセリングでだいたい内容がわかってきます。以前はいい状況が一度はあったのだから、そこに戻してあげればいいのです。障害となった原因を一つ一つ取り除いていくだけです。ケースごとに違いますが、だいたい3か月ぐらいで解決します。

――最近になって、携帯電話のフィルタリング強化が始まりました。

安川 今まで何もなかったのに比べれば、やっと動き出しただけでもよしとせざるをえません。でも、本来は大人が使う「携帯電話」と子供たちが使う「ケータイ」とは分けるべきです。インターネットは必要ですが、居間のパソコンで家族共通のルールで使えばいいんです。子供のケータイはインターネットにつなげないのが一番。

 親が子供に携帯電話を持たせる理由は、急な時の連絡とか、居場所を知りたいといったことからです。GPSはあってもいいでしょう。でも、それ以外のネット利用はいらないはずです。

 たばこだってお酒だって、年齢で制限があるのと同じこと。子供の持つ携帯電話はネットにつなげないのが一番です。成人になるまではフィルタリングははずせなくした方がいい。

 子供が見たい、知りたいのは、危ないことやいやらしいこと。

 子供たちが一番稼いでくれるから、子供たちがネットを使わないと売り上げに響くから、携帯ショップの店頭ではフィルタリングをかけさせないようなセールストークになっていく。フィルタリングも誰か一人がはずしたら、「○○ははずしている」といって、きっとあっという間に子供たちははずしてしまうでしょう。もっと大人が携帯電話の使われ方を知って、対応をきちんと考えていくべきです。

(メディア戦略局「YOMIURI PC」編集部 稲沢裕子)

(敬称略)

(2008年3月24日 読売新聞)
by miya-neta | 2008-03-24 08:04 | 教 育