陰山英男氏が指摘する「ゆとり世代」3つの特徴
2008年 04月 18日
2008年04月16日 週刊ダイヤモンド編集部
「新しい学力観」に基づく学習指導要領が施行されたのは1992年。このとき小学校6年生だった世代は、すでに27歳になっている。また、今の22歳は、小学校1年生からこの新学力観にどっぷり浸った世代。今後は、こうした“ゆとり世代”が続々と社会に出てくる。
ゆとり教育はこれまで、もっぱら「教育問題」として語られてきたが、これからは「社会問題」となるのだ。
ゆとり教育の問題として、学習内容の削減による学力不安があるが、知識量が足りないだけなら、後から詰め込めばなんとかなる。真の問題は、「個性尊重の名の下、『やりたいことだけをやればいい』と育てられてきたところにある」と、立命館小学校副校長の陰山英男氏は指摘する。
教育の現場でひと足先にゆとり世代と向き合っている陰山氏によると、この世代の特徴は3つあるという。
(1)周囲の人間や社会に対する不平不満、批判が多く、問題を人や社会のせいにしがち
(2)「物事はうまくいって当たり前」と考えるため、少しでもうまくい かないと自信を失ってしまう
(3)それでいて、「このダメダメな状況を一気に解決する夢のような方法がどこかにある」と信じている
もちろん、こうしたメンタリティがプラスに働く面はある。社会に対する不満や批判精神から、積極的にそれを正す行動に出るのは、昨今の若い世代の特徴だ。
環境や福祉、教育など社会的な課題の解決を目的に起業する「社会起業家」を目指す若者を支援するNPO法人ETICの宮城治男代表は、「若い世代の考える幸せの尺度がかつてと違ってきている。自分にとって価値のある仕事をしたい、それが既存の社会にないなら自ら起こしたいと考える若者は、特に高学歴の学生のあいだで確実に増えている」と語る。
寄らば大樹の陰で大企業を目指すでもなく、一獲千金を夢見て起業を志すわけでもなく、若者たちがただ自分の生き甲斐を求めて社会起業に関心を向けているという事実は、教育の成果の一つといえよう。
しかし、そんな彼らの弱点も、やはり彼ら特有のものだ。
「インターネットの影響もあり、批判の意識は強く、起業したい分野についてイメージも知識も十分あるのだが、それを現実につなげていくためのステップを踏む力がない。
また、多分に自分中心的で、“他者との関係の中での自分”となると途端に想像力を欠く。他者へのリスペクトの念が薄く、なにかしてもらってもそれが当たり前。信じがたいほど偉そうで恩知らずな行動も見受けられる。
さらに、うまくいかないという現実からはい上がっていく強(したた)かさもなく、一気に折れてしまい、リセットボタンを押して逃げてしまう傾向もある」と、宮城代表は冷静に分析する。その観察結果は、先の陰山氏のそれとかなり重なっている。
既存の社会にやりたいことを見つけられない若者たちは、一方でニートや引きこもりという社会現象を引き起こしている。生意気な行動派とともに、扱いが多少厄介なゆとり世代をうまく導いていくのも、おとなの務めといえそうだ。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 深澤献)