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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

【くにのあとさき】東京特派員・湯浅博 学力劣化に耐えられず

MSN産経ニュース


2008.5.22 02:58

 むかしの寺子屋は「読み書きソロバン」が主力だった。冬のすきま風などものともせず、静座で声を張り上げた。遺憾ながら、いまどきの大学生より洟(はな)垂れ小僧の方がよほど暗算がうまかった。

 かつて国際標準を上回っていたわが中学の数学授業時間数はいま、年間105時間で世界最低クラスだ。改定されるとしても200時間のインド、シンガポール、台湾、ベトナムに遠く及ばない。

 社会党が騒いで高校が全入になり、いまや大学が全入に近くなった。「教育の普及は浮薄の普及なり」という金言に従えば、やがて国まで危うくする事態がくる。

 理工系大学院の修了証をいまの企業人は信じない。学生の中には、交流の電圧が100ボルト、乾電池が1・5ボルトさえ知らない者がいる。微分積分、三角関数どころか、電卓がなければ2ケタのかけ算すらできない。

 これは最近、自動車部品メーカーの技術担当役員から聞いた本当の話である。

 院生にしてこれだと学部生においてをやである。算数さえ危ういから私学の幾つかは学習塾に教師派遣を依頼して補講をしている。「高校数学」の講座があることが逆に大学の“売り”になっているというから呆(あき)れる。そんな大学の理工系学部はいらないと思うが「いや、ドングリの背比べ」と聞いて事態の尋常ならざるを知った。

 ただ、「ゆとり世代」の学生たちにその責任をすべて転嫁しては気の毒な気もする。高校までの学習内容が3割削減され、学習機会が剥奪(はくだつ)されているのに周囲の冷たい視線にさらされる。

 都内のある大学を訪ねると、学生たちが中国人留学生を支援して、四川大地震の災害支援のカンパを募っていた。彼らの正義と誠意を四川にだけでなく、ミャンマーのサイクロン災害にも振り向けてほしいが意欲は買いたい。それでも、理工系の大学院教授の顔つきはさえなかった。

 先端技術の講座を持つ主要な大学院では、院生のおよそ半分が中国人留学生に占められているのだという。留学生たちは学業に貪欲(どんよく)だから知識、技術の吸収が早い。彼らが帰国して米国や欧州の留学組に合流すると、世界最強の技術が生み出されることになる。

 部品メーカーの役員は、「とくにハイブリッド車や燃料電池車の分野で、日本勢が中国に追い抜かれる日がくる」と危機感を語る。最先端技術であるほど容赦なく、かつ合法的に流出していく。

 そんな現状なのに日中首脳会談が開催されると、わが首相は「3000人の中国人留学生を受け入れる」などと安易な約束をする。国の決定に国立大学はいやでも配分を受け入れなければならない。

 こうなると、企業も独自防衛に乗り出さざるを得なくなる。入社試験では「人柄重視」「協調性」をやめ、「学力重視」に切り替える。人柄重視は基礎学力があって初めて意味があったからだ。

 近ごろは企業が独自の社員向け再教育機関を開設するところが増えている。だが、モノを教えて給料を払う矛盾にいつまで耐えられるのか。桜美林大学の芳沢光雄教授によると、日本企業が自国の学生に見切りをつけ、中国人やベトナム人を大量採用する日だってそう遠くないかもしれない。

 教育劣化の特効薬を先の役員に聞くと、「弥縫(びほう)策だけでは役立たない。ゆとり教育の以前に戻せ」と明確だ。お国の教育政策に焦りとともに怒り心頭なのである。(ゆあさ・ひろし)
by miya-neta | 2008-05-22 02:58 | 教 育