300日規定:無戸籍児の母ら調停申し立て 全国で4人
2008年 07月 01日
離婚後300日規定による無戸籍児の母親たちが1日、子供を「現夫の子」として戸籍に記載するため、現夫に「自分の子」と認めてもらう「認知調停」を神戸家裁などに申し立てた。規定の「前夫の子」を覆す調停で、手続きには前夫が加わらない。最高裁が6月、無戸籍解消の手続きとして全国の家裁に周知を図ったことに伴う申し立てだ。
「無戸籍児家族の会」によると、1日は3都府県で4人の子供について申し立てた。この日を含め10日までに計15都道府県の25人が予定している。
300日規定で「前夫の子」となる場合、「現夫の子」として戸籍に記載するには、前夫を巻き込んでの親子関係不存在などの裁判などが必要だ。しかし、暴力などが原因で前夫と連絡を取れないケースなどで子供が無戸籍となっていた。
「認知調停」は、以前からあった手続きだが、関係者によると採用しない家裁もあった。このため、最高裁は家裁への周知を図ったほか、裁判官や調査官への研修に乗り出している。
申し立てを行った母親らはこの日、大阪市内で会見。自分と産んだ子供が無戸籍となっている大阪府内の女性(24)は「無戸籍児に生まれて以来、本当の父親の戸籍に入りたいとずっと考えてきた。一日も早く戸籍がほしい」。近く申し立てをする京都府内の4歳の無戸籍児の母親は「子供にもつらい思いをさせているのが苦痛。やっと希望が持て、申し立てを決意した」と話した。
家族の会の井戸正枝事務局長は「前夫が関係しない認知調停は今後も増えるだろう。ただ無戸籍児の根本的な解決には法改正が必要だ」と指摘している。【稲垣淳、山田泰蔵】
毎日新聞 2008年7月1日 21時36分(最終更新 7月1日 21時52分)
◆「離婚後300日規定」(毎日新聞)
■ことば
◇離婚後300日規定
「離婚後300日以内に誕生した子は前夫の子」と推定する民法の規定。父親を早期に定めて子供の立場を守る狙いがある。前夫以外を親とするためには、前夫を巻き込んだ調停や裁判で確定する必要があり、前夫と連絡を取れない場合、出生届が受理されず子供が無戸籍となっている。法務省は07年5月、離婚後妊娠に限り、前夫以外を親とする出生届を認める通達を出した。
毎日新聞 2008年6月29日 東京朝刊